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kirino_kousaka こんばんわ kuroneko_daten こんばんは kirino_kousaka そろそろ「俺の妹」11巻を読み終わった人もいるかな。あ、ネタバレはしないから安心してね。 kuroneko_daten 最新刊を読み終わっている人は、アニメ版「俺の妹」の9話をもう一度見てみて頂戴。ネタバレを知ったいまなら、さらに深く、面白く視聴できるはずよ。 kirino_kousaka 再放送で見るって手もあるね。 kuroneko_daten ところでこんな記事を発見したのだけど、どう思う? http //t.co/FzyKs0LM kirino_kousaka ど、どうって……別に? ただまぁ、あいつには見せない方が……いいかな? チョーシ乗りそうだし。 kuroneko_daten はいはい。ふふ……この記事を見ていたら、私も萌え萌えな兄さんに会いたくなってきたわ。漆黒コスの京介フィギュア狙いで、ラッキーくじを引いてきましょう。 kirino_kousaka F賞のあやせフィギュアがダブりまくる呪いをかけた。 kuroneko_daten 人によっては喜びそうな呪いね。 kirino_kousaka B賞のアルファ・オメガコス黒猫が色々とツボるんだよねー。髪の色とか、なるほどって思った。 kuroneko_daten それはどうも有り難う。あの格好には色々と言いたいことがあるのだけれど……いまはやめておきましょう。 kirino_kousaka えろかわいくていーじゃん。何の文句があるっての? kuroneko_daten いまのあなたの発言がすべてよ。察して頂戴。 kirino_kousaka すごく眠いので寝る kuroneko_daten おやすみなさい kirino_kousaka 『俺の妹がこんなに可愛いわけがない11巻発売記念 伏見つかさ先生・かんざきひろ先生の原作タッグインタビュー』 http //t.co/wla3ueQ4 (RT @sumer_memories " F賞のあやせフィギュアがダブりまくる呪いをかけた。"こっちにも来たよ(゚Д゚;) http //t.co/2GLl1JNO) kuroneko_daten 私も2回引いてF賞あやせ×2だったわ。なかなか可愛いデキだから、まあいいかと思えるわね。 (RT @sachi_84 こういうケーキ知ってます?幸運を呼ぶ黒猫っていうんですって! http //t.co/G41GCqe6) kuroneko_daten 私も幸運を呼べるようになりたいわ kirino_kousaka あたしも色んなあやせフィギュアいっぱい持ってるんだけど、本人にみつかったらどうしよう。 kuroneko_daten ……そのくらいなら、問題ないようにも思えるけれど? むしろ喜ぶんじゃないかしら。 kirino_kousaka キャストオフ状態で飾ってあっても平気かな? kuroneko_daten みつかったらおしまいね。 kuroneko_daten フィギュアといえば、あなたの破廉恥なフィギュアが発売されるようね? kirino_kousaka これのこと? http //t.co/Z2kpFaAK kirino_kousaka アニメ公式ガイドブックの衣装だよね。まさかフィギュアになるとは思わなかった。 kuroneko_daten ……ちっとも恥ずかしがらなくて、なんだか面白くないわ。 kirino_kousaka モデルだしねー。
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このwikiのアカウント譲渡の要望が成立し、ログ整理を行いました。詳しくはこちら 魔法使いと黒猫のウィズ@wikiへようこそ このwikiは 株式会社コロプラ のゲームブランド Kuma the Baer が提供するiOS&Android用アプリ『魔法使いと黒猫のウィズ』 の攻略wikiです。 当wikiは株式会社コロプラとは、一切無関係です。当Wikiの内容についてのお問い合わせはご遠慮くださいますようお願いします。 @wikiはみんなで気軽にホームページ編集できるツールです。 このページは一部を除き自由に編集することができます。 編集が分からない方も各ページでコメントにて情報提供して頂ければ後日編集します。 発売日 2013.3.5 ( Android版 )近日リリース予定( iOS版 ) ジャンル クイズRPG 料金 基本無料 (アイテム課金制) 新エリアもうすぐ開放 黒き守り人 ハクア いきなりS出現第2弾 お知らせの編集 @wikiで分からないことは? @wiki ご利用ガイド よくある質問 無料で会員登録できるSNS内の@wiki助け合いコミュニティ @wiki更新情報 @wikiへのお問合せフォーム 等をご活用ください @wiki助け合いコミュニティの掲示板スレッド一覧 #atfb_bbs_list @wiki以外のお勧めサービスについて 大容量1G、PHP/CGI、MySQL、FTPが使える無料ホームページは@PAGES 無料ブログ作成は@WORDをご利用ください 2ch型の無料掲示板は@chsをご利用ください フォーラム型の無料掲示板は@bbをご利用ください お絵かき掲示板は@paintをご利用ください その他の無料掲示板は@bbsをご利用ください 無料ソーシャルプロフィールサービス @flabo(アットフラボ) @wikiのおすすめ機能 気になるニュースをチェック 関連するブログ一覧を表示 @wikiプラグイン @wiki便利ツール @wiki構文 @wikiプラグイン一覧 まとめサイト作成支援ツール @wikiのバグ・不具合を見つけたら? 要望がある場合は? お手数ですが、お問合せフォームからご連絡ください。
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「修正依頼」が出ています。対応できる方はご協力をお願いします。 このページでは、Windows版『リトル・ウィッチ パルフェ ~黒猫印の魔法屋さん~』 そのPSP移植版である『リトルウィッチ パルフェ 黒猫魔法店物語』を取り扱う。いずれも判定なし。 リトル・ウィッチ パルフェ ~黒猫印の魔法屋さん~ 概要 ストーリー システム 評価点 問題点 総評 その後の展開 リトルウィッチ パルフェ 黒猫魔法店物語 概要(リメイク) 主な変更点(リメイク) 備考(リメイク) リトル・ウィッチ パルフェ ~黒猫印の魔法屋さん~ 【りとるうぃっちぱるふぇ くろねこじるしのまほうやさん】 ジャンル 魔法店経営アドベンチャー 対応機種 Windows 95/98 発売元 工画堂スタジオ 開発元 工画堂スタジオ(くろねこさんちーむ) 発売日 1999年4月28日 定価 9,800円 判定 なし リトルウィッチシリーズリトル・ウィッチ パルフェ / リトル・ウィッチ レネット 概要 工画堂スタジオの開発チーム、「くろねこさんちーむ」製作の経営アドベンチャーゲーム。同チームのデビュー作で、『パワードール』をはじめとする硬派路線に強かった工画堂スタジオとしては初のライト路線のゲームである。キャラクターデザインは『久遠の絆』の岸上大策(同社製では『火星計画2』など)。 ストーリー 花と水の国フロルエルモス。城下町で母親と、自分の使い魔である黒猫の「サケマス」と共に暮らしてきた少女「パルフェ・シュクレール」。 母親が亡くなってしまい、母親の経営する黒猫魔法店を受け継いだが、店には100万ゴルダの借金があり、一年以内に返済できなければ思い出の詰まった店を失う事に。 パルフェは一念発起し魔法学校を1年間休学。一年以内に100万ゴルダの借金を返済し、黒猫魔法店を守ろうと決意するが、彼女は何も無いところで転び、魔法の実験をすれば爆発させてしまう超がつくほどのドジっ娘である。 更に、城下町にはライバルの魔法店もあるし、彼女は魔法学校には通っていたがまだまだ見習い。果たして、パルフェは黒猫魔法店を守ることができるのだろうか。 システム 288日以内に100万ゴルダの借金を返済することが目的。決算期などは特に無く、最終的に100万ゴルダの借金を返済できれば良い。 フロルエルモスの暦は1年が12か月、1か月が4週、1週が6日となっており、丸1年で288日になる。 パルフェは期間中自由に行動することができる。一応店をそっちのけで勉強し続けるも採取し続ける事も可能。 店の経営は材料調達と調合、販売の三つに分かれている。 材料調達はフィールドに出て自分で採取する方法と、市場で買い求める方法がある。 材料調合はフィールドや市場で手に入れた材料を調合し、商品を作成するパート。 調合には成功率があり、材料をそろえれば必ず商品が出来上がるわけではない。 パルフェには一定の生活リズムがあり、そのリズムが崩れると体調が悪くなり、調合の成功率が下がる。 作成した商品を店頭に最大10種類まで並べられる。 その際、半額や25%オフなど、値下げすることもできる。 街を散策するとイベントが発生する事がある。 幼馴染の友人や、ライバル魔法店の友人、皇子とさまざまな人物と触れ合うイベントが起きる。 イベントをこなすと採取可能アイテムが追加される事もある。 図書館に行くと勉強して魔法の経験値を溜めることができる。一定以上溜まるとレベルアップし、新たな調合ができるようになる。 評価点 一見すると華やかな経営シミュレーションに見える本作だが、個別エンディング到達キャラクターの5人のうち、1人が男で4人が女の子。主人公も女の子で、壮絶な百合展開が待ち受けている。 今となってはさほど珍しい事ではないが、この頃のゲームでここまで極端に百合展開をプッシュしたゲームは稀。 一応乙女ゲーム的な要素(王子とのエンディング)もあるがあくまでそちらはおまけである。 登場キャラクター達は個性的でかわいらしく、評判の良さもあり、多くのプレイヤーがこの展開に大興奮した。 百合シーンのセリフも、無名時代の水樹奈々が演じていると知ると今ではまた違った感慨を覚える。 問題点 やり方さえわかっていれば、経営自体はそれほど難しくない。 イベントなどで店の評価を上げ、魔法石を売りさばく(魔法石自体は「願いの秘石」から作れ、量産も比較的し易い割に高値で売れる)ことで容易に100万ゴルダの返済が可能。 というか後半はイベントの嵐(必須アイテムの調合で1日潰れる事もある)で店の経営がそっちのけになるので、早く返済できないと困るのだが。 総評 システムそのものも方向性も、アトリエシリーズを髣髴とさせる本作だが、かわいらしいキャラクター、そしてアトリエシリーズを凌駕する濃厚な百合展開が人気を呼んだ。 その後の展開 『リトル・ウィッチ レネット』(レネットが主人公のスピンオフ。当然の如く百合濃度も上昇)『ハートフルメモリーズ』と続き、世界観を共有した『エンジェリック・コンサート』『パルフェ・ファンBOX』、さらにPSPで『ミマナ イアルクロニクル』が登場することになる。 2005年にミマナ イアルクロニクル以外の5作品を全収録し、さらにファンブックのPDFデータとサントラCDも同梱した愛蔵版「リトルウィッチパルフェ・コンプリートパック」が発売され、本作の廉価版やダウンロード版も発売された。 リトルウィッチ パルフェ 黒猫魔法店物語 ジャンル アドベンチャー 対応機種 PSPWindows 発売、販売元 PSP版 サイバーフロントWindows版 工画堂スタジオ 発売日 2012年3月22日 定価 初回限定版8,190円、通常版6,090円 レーティング CERO C(15才以上対象) 判定 なし 概要(リメイク) 13年後に発売されたPSP移植版。 主な変更点(リメイク) 新規CGやイベント、キャラクターの追加 発表時は新キャラとして敵ポジションの男キャラが追加されるということで世界観を壊さないか不安がられていたが、評価は高い。 キャラクターデザインを藤原々々氏に変更。既存CGを含め、全てのグラフィックを新規書き下ろし。 メインキャラクターの声優陣を全員変更。 PSPに適したインターフェイスに変更。 ゲーム期間が12か月(288日)から10か月(240日)に短縮。 備考(リメイク) 2013年頃にWindowsに逆移植された。ダウンロード版のみ。 ベタ移植だが、マウスでも操作可能。 2014年1月、サイバーフロントの倒産によりPSPDL版が配信停止になった。 その後、工画堂スタジオに権利が渡ったようで、2015年4月に再配信された。
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昨年の6月7日は自分にとってあまりにも衝撃的な日でした。 ……と書き出したところで我ながら情けなくも 愚痴ばかりが続いてしまったのでばっさりとカットしまして。 あれから1年。最終巻発売1周年を記念?して 最終巻以降の黒にゃんの気持ちと決意を題材にしたSS 『呪いの果て』を投稿させて頂きました。 この話は原作12巻後の話として拙作 『光のどけき春の日に』 『かわらないもの』 から話が続いています。 また基本的に『最終巻後でも京猫』を主軸に話を作っています。 そのような展開に抵抗のある方もいらっしゃると思いますが それも一つの考えと、ご容赦頂けましたら幸いです。 それでは相変わらずの拙い作品ですが少しでも楽しんで頂けましたら幸いです。 ------------------------- 見上げた夜空と海をキャンバスにして大輪の光の華が咲いていた。 それにほんの少しだけ遅れて大地に轟く咆哮。 まるで此方の世界そのものが震えるような衝撃。 視覚にも聴覚にも、そして触覚にも。 圧倒的なまでの存在を持って五感に伝わってくるその力に 寸刻、全てを忘れて魅入ってしまう。 これから迎える『運命の訣別』のことですらも。 ……このまま永遠に花火が続けばいいのに。 そんな儚なくも愚かしい願いが適う道理も因果もありはせず。 一際唸り続けた炸裂音の余韻が消えると共に、本来の夜空に 相応しい静寂がその場に訪れた。 その寂寥の念を覆い隠して私は問いかける。 私にとってこの短くも輝いていた掛け替えのない日々の意義を。 それがあなたにとっても相応の価値を見出せてくれていると期待して。 あなたはいつでも私を安心させてくれた微笑みを浮かべながら応えた。 この思い出は一生忘れない、と。 私のことを……もっと好きになった、と。 先の寂しさも問いかけた緊張も、そんなものが何もかも 吹き飛ぶくらいの歓喜が私の心を一瞬で支配する。 私と同じ想いを抱いてくれていたことだけでも十分だというのに。 あなたの私に対する気持ちを、初めてはっきり告げてくれたから。 その気持ちに正直に、あなたの胸に飛び込んでいけるなら どれだけ素晴らしいことなのでしょうね。 でもそれは許されない。誰でもない私自身が許すわけにはいかない。 全ては目指すべき未だ遠き『理想の世界』のために。 その代わりにと私もあなたに向けた初めての言葉を口に出した。 あなたへの溢れる想いと感謝をあなたの真名によって告げることで。 浮かべた微笑みはどこかぎこちなかったかもしれないけれど。 そしてあなたが次の『儀式』を訊ねたとき。 私は震え出す手を満身の力で抑えつけ『運命の記述』の一節を指差した。 --『先輩と、別れる』 この時のあなたの呆然とした顔も、きっと私は一生忘れないでしょう。 今日この日の思い出と共に。私自身の罪を記憶に刻み付けるために。 後悔、慙愧、呵責、悲愴、愁傷、哀惜、その全てを 自らの責と余さず受け止められるように。 その決意も覚悟もずっと前から心に誓って来た筈だけれど。 それなのにどうしてこんなにも心が引き裂かれるように痛いのだろう。 溢れそうな涙を必死に堪えなければいけないのだろう。 『さようなら、先輩』と、私は別れの言葉を搾り出した。 それは文字通りの別離の挨拶。 これがあなたと交わす最後の言葉になるのかもしれない。 そう思うだけで膝が震えてその場に崩れ折れそうになる。 そんな気持ちから逃れるように。 いえ、むしろ。その感情に全てを任せられる場所に行くために。 私は早足でその場から離れる。そうでなければ、ここまで懸命に お膳立てたものを、自身の手で全て台無しにしてしまうでしょうから。 それなのに。そのはずだったのに。 もはや駆け足になろうとしていた私の身体は 不意に後ろから抱きしめられてその動きを止めた。 それが誰なのか、なんて振り返るまでもなかった。 もっとも、あなたに今の私の顔を見せるわけには いかなかった事もあるけれど。 「待ってくれ、黒猫!ちゃんと、ちゃんと説明してくれ!!」 ここまで全力で走ってきたのだろう、荒い息をつきながら あなたは必死な声で私にその真意を問い質す。 「……説明?あの『記述』を見た上で、さらに説明までしないと あなたはどうすればいいのかわからないというの? 『儀式』でもなんでも、私の望みを適えてくれるのでしょう?」 でもそれに素直に応じるわけにはいかない。 ここでその理由を話してしまっては意味がないのだから。 あなたと桐乃が自分自身の、そして互いの本心と 虚飾なく正直に向き合えるようにするためには。 私は声だけでも普段通りの調子を取り繕えるように 『マスケラ』を被りながら応えていた。 「違う、そうじゃない! お前が何の意味もなくあんなことを書くわけがないだろ!! だから、その言葉の意味を、本当の理由を聞かせてくれ!! そうじゃなきゃ……そんなこと俺には絶対に出来ない!」 「……痛いわ、そんなに力を入れて掴まないで頂戴」 「駄目だ!お前に理由を聞くまでは放せない!」 先輩は一層腕に力を込めて私の身体を抱きしめ続けた。 その強さと震える腕が、あなたの偽らざる気持ちを伝えてくる。 大切な人のためならなりふり構わないけれど 自分のことにはてんで頓着せずにいい加減なあなたが まさか私にここまでの気概を見せてくれるなんて。 そう思った途端、精一杯の虚勢を張っていた気持ちも 被りかけた『マスケラ』も音もなく崩れさってしまった。 こうなることも見越した運命の範疇ではあった。 だから、そのための対応も振る舞いも何度も繰り返して シミュレートして今日この場に臨んだというのに。 それは……なによりも嬉しかったから。 あなたの気持ちがそんなにも私に向いていてくれたことが。 私のことをそこまで信頼してくれていたことも。 そしてそれに絆されて、用意した布石も何もかも 投げ打つほどに心動かされてしまった自分自身にも。 我が事ながらその気持ちが予想外で不思議で……安心した。 あなたの気持ちに応えてもいいのだと思えたことが心の底から。 「……ええ、わかったわ。全てをあなたに話すから。 まずはその……あなたも手を放してくれないかしら……」 自分の気持ちに正直になった途端、背後からあなたに 力強く抱きしめられていることがどうしようもなく恥ずかしく思えてくる。 唯でさえあなたに今の私の顔を見せられないというのに ふら付くほどの熱が顔中を覆ってきっと真っ赤になっているでしょうね。 「あ、ああ、すまん!そのこれは! 決して、疚しい気持ちがあったわけじゃなくてだな」 私の言葉で漸くあなたも我に返ったのでしょうね。 あたふたと慌てた様子で的外れな言い訳をしながら 両腕の拘束を解いて、私からそそくさと身体を離した。 あなたの暖かさが背中から離れてしまうことに名残惜しさを感じながらも。 いつもの調子に戻ったあなたに、私の心も不思議と落ち着いてくれた。 なるべく目立たぬように右手で顔を拭ってから私は振り返える。 あなたはいまだに落ち着かないようだったけれども。 その瞳にも表情にも私に向けられた不安と心配とが見て取れる。 でもそれでも。私の次の言葉を黙って待つあなたの誠実さが嬉しくて。 「じゃあ聞いてくれかしら、先輩。 何故私があなたと別れなければならないのか。 私があなたに告白して今日まで付き合ってきたその真の意味を。全て、ね」 私はそこで一度言葉を切って、目を閉じると昂ぶった感情を一旦落ちつかせた。 『運命の記述』に記された『儀式』を執り行った先にある『理想の世界』。 そこに至るための真理を余すことなくあなたに伝えるために。 * * * 次に目を開いた時に、私の視界に入ってきたのは 夏の夜の花火会場でも大切な先輩の姿でもなくて。 毎日のように見慣れた自室の天井だった。 最近はこんな夢、見なくなったと思ってたのに、ね。 昨日あんなことがあったからかしら。 文字通りの苦笑と溜息とが胸の内より込み上げてきた。 あれからすでに2年近くの月日が経っているというのに いまだに自分はそれに囚われてしまっているのかと自嘲して。 あまつさえ、あの時の己の取った行動を棚に上げて その被害者と言うべき先輩にふてぶてしくも救いを求めようだなんて。 先刻まで、あれほどに胸を占めていた高揚も歓喜も すべては己の弱さの作り出した泡沫の幻だった。 けれど、それと気が付かされた後に残るこの遣る瀬無さや喪失感、 自嘲や侮蔑の負の感情たちは紛れもなく現実となって私の心を苛んでいる。 もっともそれこそが自らが仕組んだ罪故の罰でもあるのかもしれない。 私自身が己を赦せるようになるその日まで、もがき苦しみ嘆き憂い悔いる。 それでこそ今の我が身に分相応というもの。 この呪われし闇に囚われた忌むべき存在の今の私には。 望んだ願いの代償を粛々と履行すべき立場の己には。 何かを強く願う時。その想いが強いほどその影響力もまた力を増す。 元の願いの成就だけに留まることなく、その因果の律によって。 そして『願い』とはその強さだけでなく もたらす結果の指向によって『祝い』か『呪い』として顕現する。 今の私は文字通りの『呪い』を願ったものなのだから。 親友とその兄との関係を強引に掻き乱し、望みを叶えようとしたのだから。 ……『人を呪わば穴二つ』とは本当、よく言ったものよね。 ましてや相手の生涯を左右するような『呪い』をかけたのならば その負債もまた己の生涯をかけることになるのが道理というもの。 私の願いを遂げる為に『約束の地』で先輩の右頬に込めた呪詛の力は 『審判の日』に私自らの手で解放してはいたけれど。 それ故自身に還ってきた返呪は、今でも私を呪い、蝕み続けている。 それでも、この痛みこそ、私が私である証。 そう自分を鼓舞して昏く澱んだ心と身体をも覚醒させた。 今更痛みを恐れて歩みを止めることなどできはしない。 この痛みの先にこそ、私が目指す頂きがあるのだもの、ね。 * * * 起き出してからはいつものように、颯と家族の分の朝食の用意を済ませると 自分の朝ごはんを急いでお腹に詰めてから、準備もそこそこに家を後にした。 普段なら通学、通勤で騒々しくも活気に満ちた駅への道も今は日曜日の早朝。 ジョギングや犬の散歩をしている人がまばらにいるだけなのが 少し物寂しい気持ちを抱いてしまう。 ……いけない、着くまでにはこんな感傷を切り替えないと 私はそんな気持ちを振り切るように、何時しか小走りになって駅へと急いだ。 そして新京成線の電車に乗って津田沼まで移動してから 総武線に乗り換えて千葉へと向かう。 引っ越す前には私の地元でもあった慣れ親しんだ千葉の街。 その頃も、そして引っ越した後になっても何度も歩いた道を辿りながら 私は目的の場所に約束の時間通りにたどり着いた。 念のため呼び鈴を押すものの、予想通りに反応はない。 ご両親は夫婦で旅行。桐乃は昨日と同じく陸上の大会に出かけている。 そして唯一人在宅のはずの今の先輩に無理に応対されても 困るのだからそれで良いのだけれども。 私は桐乃から聞いていた通りに、玄関脇においてあった 如雨露の中から合鍵を取り出すとドアを開けて高坂家の中に入った。 「おじゃまします」 誰も応える人はいないと判ってはいても 一応の礼儀の言葉を口に出して私はひとまずリビングに向かった。 案の定、誰もいないリビングのテーブルには 桐乃からの置手紙が用意されていた。 まったくメールで十分でしょうに。 そう思いながらもそれが桐乃の偽らざる 気持ちの表れだというのも勿論のこと理解している。 あの娘は普段の自信に溢れた姿からは想像できないくらい 予想外の事には時に脆さを見せることがある。 昨日のことでも相当精神的に堪えている筈。 それでも自らの成すべき事を見失わずに 気丈にも後事を私に託して『戦いの場』に赴いたのは さすがは我が宿敵たる『熾天使』というべきでしょうね。 『今日1日、兄貴の事は瑠璃にお願いするから あいつが無茶しないようにしっかり見張っていること! あたしが帰ったときに何か問題が起きてたら承知しないかんね!!』 ええ、わかっているわ、桐乃。あなたの期待に間違いなく応えて見せる。 だからこちらのことは心配しないであなたは自分の戦いに集中なさい。 一通り置手紙に目を走らせてから私は天を仰ぐと 決戦の地に身をおいてなお、兄のことが心配で堪らないであろう 健気な妹に向けて精一杯のエールを送った。 * * * 桐乃に昨晩チャットで教えられてた通り、冷蔵庫に残っていた 食材を使って、先輩の朝食の用意をしていたのだけれども。 2階のほうからなにやら物音がしたかと思ったら ドアの開く音に続いて、ゆっくりとした足取りで 1段ずつ階段を降りてくる響きが伝わってきた。 すぐに手助けに行くべきかしら、とも思ったけれど。 結局私の身長と非力さとでは、ほとんど役に立てないと判断して 大人しくそのまま料理を続けることにした。 「すまんな、黒猫。こんなに朝早くからわざわざ来て貰って」 リビングに入ってくるなり、先輩は本当に申し訳なさそうな調子で キッチンにいる私に向けて謝罪の言葉を口にしていた。 「朝の挨拶は、すまん、じゃなくて、おはよう、でしょう、先輩。 それに昨日3人で約束した通りのことなのだから いい加減、そう何度も繰り返し謝られてもこちらも困ってしまうわ」 小皿にとったスープの味見をしながら私は応えた。 実際に先輩の姿は見えているわけではないけれど、痛みを堪えながら こちらに向けて頭を下げている先輩の姿がありありと想像できるもの。 まったく私に対してそこまで他人行儀に謝られるのは心外というものよね? 「ああ、そうだな、おはよう、黒猫、ってて」 笑い声と共に朝の挨拶、そして最後には痛みを訴える声も混じっていた。 きっと笑ってしまったのが怪我に響いたのでしょうね。 「おはようございます、先輩。もう少しで朝ごはんも出来るから 先輩は椅子にでも座って大人しく待っていて頂戴」 「ああ、そうするよ」 これ以上先輩に余計に痛い思いをさせないようにとそう諭す。 下手をすると用意を手伝うとかいいかねない、と思ったのだけど 思いのほか大人しく従ってくれたようだった。 先輩はリビングでTVを見始めたようだったので私も朝食の仕上げに専念した。 こちらに漏れてくるTVの音声とキッチンで私の扱う包丁の音、 そしてスープをコトコトと煮ている音だけがこの場を包んでいる。 そんな静かで穏やかな雰囲気がとても心安らぐ感じがしている。 先ほどまで料理をしていたときとなんら変わらないはずなのだけども、ね。 それは先輩と私の、言葉はなくとも暖くてくすぐったくて 落ち着くようなあの感覚に似ている気がした。 それに……改めて考えてみれば今の状況はまるで。 そう思った途端に、沸騰していたヤカンに負けないくらいに 私の頭からもぼふっと蒸気が立ち昇ってしまっていた。 まったく自分は桐乃に余計な心配をかけないようにここにきているというのに。 ましてやあんな夢を見た後に、我ながら不謹慎極まりないというものだわ。 私は慌てて頭を振って、余計な雑念を追い払った。 暫くそうしているとようやく顔の熱も取れて落ち着いてきたけれど。 口元に浮かんでいた笑みは変わらずそのままだったかもしれないわね。 「さあ、お待ち遠様、先輩。食欲はあるのかしら?」 「大丈夫だ、黒猫。昨日はなかなか寝付けなくてぼーっとはしてるけどな」 確かに言葉の通りに普段より眠そうにぼんやりとした様子だったけれど。 逆に言えばそれほど痛みもないようだから一安心というところかしらね。 「そう、じゃあひとまず朝ごはんを食べたら薬を飲んでまた休んでいて頂戴」 「悪いけどそうさせてもらうぜ、こんな調子じゃ 俺が起きていてもお前に気を使わせてしまうばっかりだしな」 相変わらず自嘲じみた台詞を漏らす先輩。 まあ気持ちは分らないではないけれどもね。 怪我や病気をしたときは気分も落ち込んでしまうものだし 人に面倒を見てもらわなければならないことが気にかかるのでしょうね。 それでもこんなときくらいは、少しは人の好意を 素直に受け止めてもいいと思うわ、あなたは。 「そう、なら桐乃が帰ってくるまでの間は 私は部活の作業や勉強をしているからこちらの心配は無用よ。 何かあればあなたの机を借りているから声をかけてくれればいいわ」 私は炒飯とスープをテーブルの先輩の前に並べてスプーンを差し出した。 昨日、左鎖骨を骨折してしまった先輩は左手は使えないのだけど このメニューならスプーンだけでも問題なく食べられるでしょうから。 鎖骨の骨折なので腕のようにギブスをしているわけではなく 先輩の姿はTシャツに短パン姿で一見何事もないように見えるけれど。 シャツの下では鎖骨バンドと呼ばれる特殊なバンドを使って 骨折した箇所がずれないように固定しているらしい。 とはいえ、やはり身体が動けば患部に痛みは走るものらしく ましてや骨折した側の左腕を動かしてしまうわけにはいかないとのこと。 ゆったりとした動きしかできず、ましてや片腕一本では 日常生活にしてもかなりの支障がでるわけだけど。 だけど間の悪いことに今週末は先輩のご両親は旅行で出かけているし 桐乃もまた昨日に引き続き陸上の大会で先輩を看護出来る人がいなかった。 だから昨日、桐乃の応援に先輩と一緒に行っていて その現場に出くわした私が、先輩の世話をかって出たのだった。 だってそうでもしないと自分をかばって骨折した先輩のために 桐乃が陸上大会を棄権しかねない剣幕だったから。 それに。桐乃が無事に大会に出場したとしても。 先輩を放っておいたらその身体で桐乃の応援に行きかねなかったもの。 まったく、どれだけシスコンでブラコンなら気が済むのよ、この兄妹は。 なんて悪態をつくのも、いい加減にうんざりするくらいだけれども。 もっとも、そんな2人と十分に判っていて、だからこそ これからもずっと一緒にいるのだと自らに誓った私が そんなことを言える筋合いでもないのでしょうけど、ね。 それにむしろそれこそが、私の真に望む世界への道標となるのだから。 「さんきゅ。そういや、お前の分はいいのか?」 「私は自分の家で朝ごはんを済ませてあるからお茶だけ頂くわ。 先輩は朝はいつもコーヒーのようだけど、一説によるとコーヒーは 利尿作用でカルシウムが排出されて骨密度が下がるとも言われているわ。 対して緑茶に含まれるフラボノイドは骨を強めてくれるから せめて完治するまではこういう緑茶のほうがいいのかもしれないわね」 私は2人分の緑茶を急須から湯飲みに注いで私と先輩の前にそれぞれ置いた。 先輩は私の口上にへぇーと感心しながら湯呑を持って 早速とばかりにお茶を一口啜った途端に。 「あちち、っててて」 「ほらほら、入れたばかりなのにそんな無造作に飲むからよ。 普通の煎茶は熱めの温度のほうが程よく渋みが出せるのだけど…… ごめんなさい、あなたには一言注意しておくべきだったわね」 お茶の熱さに慌てて口を離した先輩はその勢いが患部に響いたのでしょうね。 熱さと痛みを堪えて顔をしかめていたので、私が慌てて湯呑を受け取ると 苦しそうに左手で右肩のあたりを押さえていた。 「いや、俺がうっかりしてただけだって。 それにしても、こんな有様になると普段の五体満足の身体が どれだけ恵まれているかってつくづく実感するよな」 「そうね。蒙昧な人間風情では事の本質を理解しているつもりでも 実情を伴わなければ体感できないのは無理からぬ事。 精々良い機会と思って失ったものの有難味とその意義を 存分に噛みしめておくことね?」 元々普段は覇気とは縁遠いようなあなただけれども。 いつにもまして自嘲気味な先輩の物言いに内心溜息を付きつつ 私は『夜魔の女王』としての台詞で発破をかけてみた。 それで少しでも普段の調子に戻るといいのだけれども。 「そうだな……前にも何度も思い知ったはずなのにな。 それでも繰り返しちまうのがやっぱり人間風情の 愚かなところなんだろうよ」 でも私の思いとは裏腹に、先輩はどこか遠い目をしながら そんなことを呟くように言っていた。私の想像している以上に 怪我で感傷的になってしまっているのかしらね。 「まあ、それでも今回は名誉の負傷というものでしょう。 あの時のあなたは桐乃に勝るとも劣らない速さだったわよ? さすが妹のためなら人生だって投げ出せるお兄さんね」 それならと別の切り口から攻めてみたのだけれど。 最後の言葉に自分でも予想外に棘が込められてしまったのは 私自身も今朝の夢見のせいで感傷的になってしまっていたから。 「その結果がこの様なんだからなぁ。 本当、俺達は黒猫にはずっと迷惑かけっぱなしだよな。 おまえにはいくら土下座しても謝り足りないくらいだぜ」 ……それはどのときのことなのかしら、ね、先輩? 「そんなに畏まらないで、と何度言ったらわかるのかしら? 今度謝罪を口にしようものなら、今日1日、あなたから執拗に ハラスメントを受けた、と桐乃に報告させてもらうわよ」 「すまん、俺が悪かった!……っていまのはノーカン……だよな?」 「クククッ、今やあなたの命運は我が胸三寸次第、ね。 まあ、あなたの名誉の負傷に免じて今のは無効にしておきましょう。 寛大なる『夜魔の女王』の裁定に感謝することね?」 私は『堕天聖の見栄』を切りながら女王に相応しい不敵な笑みを浮かべた。 まったくこれであなたにかける慈悲は何度目かしらね? 「……ん?感謝はしていいのか?」 ……いけない、そこは盲点だったわね。 「そ、そうよ、下賤に卑屈に塗れた態度で謝るのではなく 威風堂々と礼を尽くしてこそ相手の心にも届くというもの。 それならば『女王』として止ん事無く受容もしましょう。 ……もっとも、時宜は弁えなさいよ?」 慌てて言い繕うものの、先輩は込み上げる笑いを 必死になって堪えているようだった。 「……わかったよ、それじゃあまずはこの朝飯分、な。 ありがとう、黒猫、早速食わせてもらうぜ」 堪えた分をそのまま解き放ったかのような晴れやかな笑顔になって。 先輩は私に優しく感謝の意を表してくれた。 「ええ、精々怪我がすぐ直るように、たんとお食べなさいな」 その笑顔にすっかり毒気を抜かれてしまったから 私も片意地を張るのはそこまでにしておいた。 だって私だけ意固地になっていても虚しいだけだもの。 まったく、その時に至るまでは、と、私は常々『妖気の障壁』を 張り巡らして用心してあなたと接しているというのに。 あなたはいつのまにかそこにいるのが当たり前な態度で 障壁を無力化してその内に入り込んで来てしまうのだから。 それもあなたが無意識な分、本当に性質が悪い事だわ。 だからもうそれもあるがままに受け入れましょう。 それも返呪によってこの先も我が身を焦がされ続ける 私の宿命というものでしょうから、ね。 * * * 先輩は朝食を食べ終わり、処方されていた薬を飲むと 自分の部屋に戻っていった。私はその間に、台所の洗い物や 2人の洗濯ものを片付けてから先輩の部屋に向かった。 改めて考えてみると、高坂家に遊びに来る機会はここ最近でも 何度もあったのだけれども。それでも先輩の部屋に入るのは 先輩と付き合っていたとき以来、2年振りくらいになるのかしら。 そう思うと得も言われぬ感覚に囚われてしまい。 思わずドアの前で襟を正し、2度ほど深呼吸をして気持ちを落ち着けた。 漸く意を決した私はなるべく小さ目にドアをノックしたのだけど 幸か不幸か中からの返事はないようだった。肩透かしを受けた気分で 先輩の部屋に入ると、案の定、すでに先輩はベッドで眠りに落ちていた。 鎖骨の骨折の場合、身体を完全に水平にしてしまうと負担がかかるらしく 上半身側にさらにマット積んでスロープ状にして、身体を半ば起こした 椅子にもたれているような体勢になっている。 確かにこれでは昨夜寝付けなかったというのも頷ける。 慣れないとこの体勢でなかなか熟睡なんてできないでしょうから。 それでも昨夜の寝不足のおかげなのでしょうね。私が先輩の部屋に 来るまでの20分もしないうちに睡魔の虜になっていたのだから。 でもその方がきっとよかったのかもしれない。 先輩にとっても。そして私にとっても……かしらね。 私は家から持ってきたキャリィバッグの中から 愛用のノートPCを取り出すと、先輩の机を拝借して まずは部活で作成中のゲームのスクリプト書きに取り組み始めた。 ……ふぅ 何度目になるのかもはや数えることすら放棄した溜息が漏れた。 すでに時刻は正午を回っていたけれど、未だ先輩は目覚めていない。 おかげで作業時間はたっぷり数時間は確保出来ていた、はずだった。 私の最たる長所は一所に打ち込む集中力だと自負しているのだけれども。 一向に進んでくれない作業の手がそんな自尊心を嘲笑うかのようだった。 理由は明瞭にして単純だった。いざスクリプトを打ち始めても 作業の合間合間に雑念が湧き出てはすぐに頭を埋め尽くしてしまい。 気がつけばモニタではなく先輩の寝顔ばかり見ていたのだから。 いったい誰が先輩が寝ていたほうがよかった、なんて思ったのかしらね。 これなら先輩と雑談でもしていた方がまだ作業は捗ったかもしれない。 それにしても、随分と寝苦しい体勢でしょうに 無邪気なくらいに安らいだ寝顔で眠り続けている先輩は この世知辛い世の柵から全て解放されたかのような穏やかさを感じさせる。 ……まったく、私はこんなにも頭を悩ましているというのに。 あなたは随分とのんきなことよね。その能天気な寝顔が羨ましいわ。 そんな八つ当たりだと分りきっている事でも、次々と頭に浮かんで来てしまう。 現状の指針、これからの自分の進路、その上で目指す私の真の理想。 私は確固たる想いでそれらを自らに誓い、その実現に向けて 私なりの全力を尽くすつもりではあるけれども。 『此方の世界』の仮初の身では、この脆弱たる身体だけではなく。 本来は魔王の位階にあるはずの我が『魂魄』ですら 人の領分の制約を受けざるを得ない、ということかしら。 そうでなければ、こんなにも覚束無くて、遣る瀬無くて、心憂い。 そんな気持ちとは無縁でいられるはずなのでしょうから。 それに、本当に私の目指す理想が、あなた達の望みと重なりあえるのか。 その自負がないわけではないのだけれども。 私やお父さんとあなたがかわした約束も。 互いの想いが通じあったのに期間限定だったあなた達の恋人関係も。 桐乃がその期間後でも留学を取りやめて、私の高校に入学してきた事も。 そしてあれからのあなたたちとの交流を通して伝わってくる想いにしても。 それら全てがその命題を立証してくれていると私は感じている。 それでも止め処ない煩慮が幾度となくこの呪われし心を昏く澱ませる。 そも人を呪いし者の行き着く果てには希望などありはせずに。 ただ道化の如く運命の因果に弄ばれたあげく、自らの躯を収める 墓穴しかないのが世の理なのかもしれないのだから。 ……いけない、これじゃとても作業にならないわね。 お昼も過ぎた事だし先輩が起きる前に先にお昼の用意をして 気分転換するべきかしら。 そう思い立って先輩の部屋から出ようとしたそのときに。 「ぐっ、う、ううぅぅ」 背後からの先輩の苦しげな呻き声に私は慌てて振り返った。 「先輩!?だ、大丈夫なの?」 「……あ、ああ、だ、だい、じょう……ううぅ」 強がりですら最後まで口に出来ないくらいに、 先輩は痛みからか息みで顔中を皺だらけに顰めていた。 「莫迦、大丈夫なわけないじゃない!痛むのね?」 「ああ……くそっ、いてぇ……」 私は急いで机の上に置いてあった先輩の処方薬袋から 痛み止めのための錠剤を取り出し、用意しておいたピッチャーから コップに水を注ぐと先輩の枕元に駆け寄った。 「ほら、薬よ、飲める?」 先輩の身体を左手で支えながら先輩の右手に薬を手渡す。 その際に左手に感じた不自然なほどの先輩の温もりが かなりの発熱を伴っていると教えてくれた。 薬を受け取ったものの、今の先輩にはそれすらも 難儀なことだったのでしょうね。痛々しい程ゆっくりと 右手を口元まで引き上げて、漸く薬を口に含んでくれた。 続けて先輩にコップを手渡そうと思っていたのだけど。 今の様子に自分で飲ませたほうが早いと判断して 先輩の口に直接コップをあてがうと、ゆっくりと水を流し込んだ。 「直に痛みも薄れると思うけれど…… あまり酷いようだったら救急車を呼ぶわよ?」 「いや……それは、遠慮……しとく、ぜ」 ある程度先輩の応えに予想はついていたものの、思わず心の中で 溜息をついてしまう。そもそもこんな怪我をしているのに 旅行中の御両親に連絡をいれてもいないくらいなのだから。 大方、さらに大ごとになって、桐乃や御両親に 余計に心配をかけさせたくない、なんて理由からなんでしょうけれども。 まったく、1度くらいあなたを心配している 人たちの立場になって、あなた自身を顧みてみることね。 2度とそんな無鉄砲なことを言えなくなると思うから。 でもそんな思いとは裏腹に私は先輩に軽く首肯して見せた。 こういう時にあなたを止めたって聞かないのはもう判りきっているもの。 ならばそんなあなたを精一杯にフォローするのが あなたと共にある者が取りうる次善の策、というものでしょう? 「わかったわ。それならもう暫くは我慢して頂戴」 先輩はどうにか頷いてそれに応え、起していた身体を再びベッドに預けた。 いまだ先輩の顔からは苦しい様子が見て取れるけれど、痛みへの慣れなのか それとも無理やり抑えているのか、苦痛を訴えるような呻きは止まっていた。 「待っていて、下で冷やすものを用意してくるわ」 私は1階に下りてキッチンに向かい冷凍庫から氷を取り出すと キッチン用のジッパーに水と一緒に詰めて口をしっかりと閉じ タオルでくるんで簡易の氷嚢をいくつか作る。 そして変えの氷嚢と新しい氷のために氷製皿に水を張って 冷凍庫に入れた後、バケツに水を十分に汲んでから 氷嚢と一緒に先輩の部屋に持って帰った。 「一度汗をふくわよ?痛かったら教えて頂戴」 熱と痛みとで、なのでしょうね。顔中に浮かんできていた大粒の汗を 身体を揺らさないよう慎重にふき取ってから、一度バケツで絞りなおして 滑り落ちない様に注意しながらおでこに乗せた。 「今度は氷嚢を当てるけれど。冷たさに驚いて 身体を動かしてしまうと余計に痛いでしょうから気をつけて」 即席の氷嚢を、先輩の骨折した鎖骨の辺りにゆっくりと触れさせる。 ほんの少しだけ先輩は身動ぎしたけれど、特に問題はないようだった。 「……冷やすと、結構痛みも、マシに、なるんもんなんだ、な」 「そうね、怪我をすると熱が出るのも体の修復機構のためなのだけど。 特に患部では発熱や腫れで神経が圧迫されて余計に痛みが出てしまうから こうして冷やしたほうが楽になるのよ。その分、治りも早くなるし」 暫くそのまま冷やし続けていると、徐々に痛みも引いてきたのか 先輩は感心したように口を開いていた。 「それにしても怪我とかにも意外と詳しいんだな、黒猫は」 「意外とはなによ……確かに私が怪我をするような事はあまりないけれど。 日向や珠希の面倒を見ていれば自然とそんな知識も増えていくわ。 骨折も、前に日向が腕を折ってしまった時の経験があるから」 中学になった今でもそうだけど、日向は昔から男の子のような 活動的な遊びも好んでいる。あの時も確か児童館のトランポリンで 空中3回転に挑戦していたとかで、器具の縁に腕を打ち付けて 骨折してしまったのよね…… 活発で健やかなのはいいことだと思うけれど。 もう中学生になったのだからもう少し日向にも落ち着いて欲しいものよね。 「そっか……本当、いいお姉さんなんだな、黒猫は。 俺も黒猫みたいな優しいお姉さんの弟になってみたかったもんだぜ」 「な、なななな何を言っているのよ!?あなたは……」 「いててて、黒猫、痛いって!」 「あ、ご、ごめんなさい」 と、突然妙なことをいうから思わず氷嚢を押し付けてしまったじゃない。 でも思わず謝ってしまったけれど、今のはあなたの自業自得というものよね? それにしても……あなたが私の弟、だなんて。 逆の立場を何度か想像をしたことはあるのだけれども。 きっと日向や桐乃とはまた違った方向で、私はあなたの心配で 頭を悩ます日々を過ごすことになりそうね…… え?それも望むところなんだろう、ですって? 例え結果は同じだとしても、物事の事象というものは それを導き出した過程やその構成要素も大切な因子なのよ。 そんな浅膚な考えでこの『夜魔の女王』の思考を推し量らないで頂戴。 「そもそも、私なんかよりあなたのほうがよほどいいお兄さんでしょう? 大切な妹のためならこんな大怪我を負ってしまうくらいなのだから」 「そういうなよ、あんときゃ無我夢中で それ以外のことなんて考えている暇も余裕もなかっただけだって」 「『待て、待ってくれ、桐乃!』だったかしら? あの時のあなたは文字通り命がけだったのでしょうしね。 でも本当、よくあのタイミングで間に合ったものだわ。 さすが桐乃のお兄さん、と言うべきかしらね」 「火事場の馬鹿力、ってやつなんだろうなぁ。 普段は勿論、あの場面を再現されてもう一度やれったって とてもじゃないができる自信はないぜ」 あの時、競技場の外の公園で3人でお昼を食べた後 桐乃がこちらを振り返りながらも競技場に駆け戻ろうとした。 ちょうどそこで施設の向こうから走ってきた作業車が 桐乃と互いに死角になっていたらしく、どちらも相手を 認識出来ていないまま、その軌跡が重なりあおうとしていた。 それに気がついた私が桐乃に必死に呼びかけたものの 私が声援を送ったものと勘違いしたのか、桐乃はこちらに 手を振り返すだけだった。 その途端、先輩は桐乃の名を叫びながら猛然と駆け出していった。 刹那の差で桐乃に追いついた先輩は、桐乃を抱きとめてると その勢いで倒れこみ、間一髪で激突は避けられた。 先輩は身を捻って下になったので桐乃はまったくの無傷だったのだけど。 左の肩口から地面に落ちた先輩は、2人分の体重と倒れこんだ勢いとで 鎖骨を骨折してしまった。 幸い、骨折した箇所は骨のずれもなく、1ヶ月もすれば 綺麗につながるだろう、と医師には診断されている。 それでも昨日1日だけでも、骨折した生活の大変さが 先輩は身に沁みてはいるようだけれども。 「でも、私なんて車に真っ先に気がついたというのに 結局なにも有効な行動を起こせなかったもの…… だからあなたには本当に感謝しているわ。 私の親友を助けてくれてありがとう、お兄さん」 「よせよ、そもそもお前が気がついてくれたおかげだろ? お前が教えてくれなきゃきっと俺も間に合わなかったよ。 だからありがとうな、黒猫。今日の分も含めて、な」 そろそろ薬も利いてきたのかしらね。神妙に頭を下げた私とは対照的に 痛みも取れた穏やかな顔で先輩は私に感謝の意を示してくれた。 私としてはなんとも面映いばかりだけれども、ね。 それでも顔に熱が昇って来るのが抑えられず そう、と応えた後には私は俯いて先輩と顔を合わせられずにいた。 「さて、だいぶ痛みも取れてきたし後は氷嚢は俺が持つよ。 ずっとそうやって黒猫が支えているのも大変だろ?」 「いいえ、今のあなたは余計な心配なんてしないで大人しく 自分の回復だけに専念しなさい。そのために私はここにきているのよ」 私のそんな様子をなにか勘違いしたものなのか、 自分に余裕が出てきたらってすぐに人の心配をしているのだから。 そこまでくるともう病気といっていいレベルよね? まあ、その気持ちが嬉しくないといったら嘘だけれども…… それでも今は余計なお世話というものよね。 私は先輩の目を厳しく見据えてると、あえて強い口調で、 それこそ弟を諭す姉の口調で先輩を窘める。 「……わかったよ、じゃあもう少し宜しく、な」 「ええ、痛みも取れてきたならそのまま大人しくしていて頂戴」 私と少しだけ目を合わせた後、諦めたように先輩はそう言って目を閉じた。 ふふっ、先輩にしてはやけに察しがいいと思ったけれど。 あるいは私と同じように、ここ数年の付き合いで 私のことをよく判ってくれているってことなのかしら、ね? そんな確かな実感が、私の心を暖かかく包み込んでくれていた。 * * * 額のタオルを5回は絞りなおして、2つ目の氷嚢の中の氷が すっかりと溶けてしまった頃には、先輩の穏やかな寝息が聞こえてきた。 ……もう、大丈夫かしらね。 私は氷嚢を先輩から離すと、肩口まで布団をかけなおした。 気がつけば時刻はすでにお昼どころか すっかり午後のティータイムの時間、といったところだった。 これでは今からお昼を作っても夕飯の時間になってしまうかしら。 その頃には桐乃も戻ってくるでしょうしそれにあわせたほうがいいわね。 それでも幾分空腹感を覚えた私は、ひとまず自分の腹ごしらえと 先輩がすぐに目を覚ました時のことも考えて、ありあわせの材料で 少し多めにサンドイッチを作って遅い昼食を済ませた。 そして先輩の部屋に戻ると、もう一度先輩の机に向かって 今度は参考書をバッグから取り出して受験勉強の方に取り掛かった。 勉強の方がきっと余計なことを考えない分気も楽でしょうから。 「……って」 「え?」 掛け時計の針が時を刻む音しか聞こえなかったこの部屋では 先輩がかすかに何かをつぶやいた声も私の耳にまで届いていた。 また痛みが?と思った私は慌てて先輩の方を振り返ったけれど。 先輩は先ほどまでと変わらず目を閉じて眠っているだけのように見えた。 寝言なのかしら、と訝しんだその時に。 「……待て」 今度ははっきりとした言葉となって先輩の口から漏れた。 幾分表情は険しくなっているようだけれども それでも相変わらず先輩は目を閉じたままだった。 「……待ってくれ!」 次の先輩の言葉は叫びといえるほどのものになっていた。 その表情からも、声に劣らない必死さが溢れている。 それは昨日、桐乃を助けた時に見せたそれを彷彿させた。 ……また熱が出て魘されているのかしらね。 そう思い至って、もう一度冷凍庫から氷嚢を取りに行こうと 私は椅子から立ち上がった。 それにしても、あなたは夢でも妹を救おうとしているのかしら、ね? そこまで想うほどの桐乃との絆を、それでこそと得心する気持ちと。 その絆の強さこそ、私も大切にしたいものだと改めて思う気持ちと。 さらにその奥底には。今朝の夢から、いえずっと前から抱いている それを羨ましいと思ってしまう気持ちが、胸の内で渦巻いていた。 ……いけない、そんなことを考えているときではないわ。 私はそんな気持ちを振り払うためにも部屋のドアに手を掛けた。 「待ってくれ、黒猫!!」 ……え? その先輩の言葉が、今朝方見た私の夢のそれと重なって聞こえて。 私は氷嚢を取ってくる事も忘れて、呆然と先輩の寝顔に釘付けになっていた。 ……まさかあの時の夢を……いまだにあなたも見るというの……? 先輩はベッドから持ち上げた右手を覚束なげに彷徨わせていた。 まるで……届かない何かを懸命に掴もうとするかのように。 その手に招かれたように気が付けば私は先輩の元に歩み寄っていた。 そしてそれが伝わったとでもいうのか先輩は空に伸ばした手を私に向けた。 私の真名を幾度となく呟きながら。 ……あの時に確かに解き放ったはずの呪いは 今もあなたも苛み続けているというの……私と同じように。 人を呪わば穴二つ。今朝思い知ったばかりのその戒めが さらなる事例を持って私の心を強く打ち据える。 目的を適えるためにと強く願った想いの代償は やはりこうまで対象者と当事者を苦しめるというのだろうか。 『審判の日』の時。あなたは自分と正直に向き合って出した 気持ちを伝えるために、私への想いの離別を告げた。 不器用なあなたが、桐乃への、そして桐乃からの想いと 全てを賭して相対するためにそれは必要なことだったのでしょう。 そしてそれは私の想い描いた理想の一つの到達点でもあった。 だからあなたの想いに応えるために『運命の記述』を滅尽させ あなたと私を繋いでいた呪いを解呪した。 それであなたと桐乃が本当の意味で向きあえると考えたから。 小さい頃に擦れ違ってから、それでもなお離れられなかった あなたたちの心をもう一度結びなおす事が出来ると思ったから。 そのうえであなたたちは初めて本当の兄妹に戻れるはず。 擦れ違って辿れなかった本来の兄妹の関係をやり直して。 異性の兄妹を好きになる気持ちだって本来は自然な流れ。 一番身近な家族を慈しみ合うことで、人を愛する土壌を作るのだから。 だからそこからまずあなた達は向き合う必要があったのよ。 そして互いを認め合い助け合い、許し合い想い合っていく。 時には衝突したり喧嘩したり進む道が別れたりもするでしょう。 それでも結ばれた絆は永遠に離れることはないわ。 そしていつかは互いを祝福しあえる時が訪れる。 だって、それこそが家族というものだから。 未だ何一つ成し得ていない私の人生においてさえ それだけは私は胸を張って断言することができるから。 掛け替えのない家族に育まれてきた私には。 そしてその先にこそ私の『真の理想の世界』があるのだもの。 私の初恋は打ち砕かれたけれど。すべてが昇華された後に もう一度私の恋心と向き合える時がくると信じているから。 刎頸の親友に支えられ、敬愛する両親に導かれ、慈しむ妹達に励まされ。 私は漸く見出したその至高を全身全霊を持って追い求めると誓ったのだから。 だけど。 そのためにあなたの心を幾度となく傷つけてしまった。 あなたの想いを踏みにじり、無理やり突き放してしまった。 思い悩むあなたの退路を断ち、否応なく試練と向き合わせてしまった。 その罪は罰として、私はこの身を賭して償うつもりだけれども。 あなたがその想いを抱いたまま今も苦しんでいるのだとしたら。 その元凶である私自身がそれを助ける資格はあるというの? その伸ばされたあなたの手に今更私が応えてよいというの? ……私は……そんなにもあなたを苦しめた私は…… 今でもあなたを大好きですって……伝えても……いいの? それは『運命の記述』を記してから幾度となく悩み抜いてきた最後の難題。 『真の理想の世界』に至るための最後にして最大の障壁となるもの。 桐乃にも指摘された私自身の彼氏を作る資格の欠如。 それがずっと私の心を闇の業火で焦がし、苛み続けているのだ。 でも、それでも。 私は先輩の右手を両手で包み込むと胸元に引き寄せた。 たとえそれが理に適わない単なる自己満足であっても。 疲弊したあなたの心の隙に付け込んだ穢い行為になるのだとしても。 それで今のあなたの辛さを少しでも和らげることができるのなら。 私は喜んでそれをなしましょう。 それがあの時の私の犯した過ちを償うことだと信じて。 大望のためならば些事と切り捨てた驕りを二度と繰り返さないために。 それに。結局、私の描いた『理想の世界』に留まらず あなたも桐乃もあなた達の決断で歩み続けることを選択した。 それが『真の理想の世界』を目指す道を開いてくれたから。 だから今はそれを後押しすることこそが私の役目でもある。 だって桐乃はともかく先輩だって、本当はこんなにも脆い姿を 隠しているのだから。 自らの罪も罰も。ましてや資格などを悩む前に 私は私がやらねばならないことをなすだけよ。 この『夜魔の女王』たる私に…… いえ、この私『五更瑠璃』にしかできないことを、ね。 私が先輩の右手を手に取った時から 先輩は痛いくらいに私の右手を強く握り返していたけれども。 私は左手で先輩の右手の甲を緩やかにさすり続けた。 どのくらいそうしていたのでしょうね。 次第に私の名を繰り返していたうわ言も収まっていって 気が付いたときにはあれだけ握り締めていた右手からも力が失われていた。 ……そんなに満ち足りた顔をして。 せめて夢の中ではあなたに応えられたのかしらね。 先刻までの必死な面もいつの間にか穏やかな寝顔に変わっていた。 その様子に安心して、先輩の右手から手を離そうとしたのだけれども。 その瞬間、先輩の手に再び力が込められて私の右手を掴みなおしていた。 ……あらあら、仕方がない年上の弟さん、ね? 時折、日向や珠希が寂しさからなのでしょうね。 普段はしないような我侭を言って、私を困らせる時があるのだけれども。 今の先輩の仕草は、それと本当によく似ている。 やれやれね、と、私は苦笑を浮かべながらも 姉の務めを果たすためにもう一度その手を握り返した。 そのときにふっとあなたの寝顔が微笑んだ気がしたのは きっと私の思い過ごしだったのでしょう、ね。 * * * 「ん……黒猫、か?」 「あら、漸く目が覚めたのかしら?けれどまだ寝惚けているの? まさか私が今日ここにいることを忘れたわけではないでしょうね?」 窓の外が黄昏色に染まりかけた頃、先輩はようやく目を覚ましたようだった。 私は代数幾何の問題集に取り組んでいた手を止めて先輩の方に向き直る。 「あ、いや、すまん。そういうわけじゃないんだが」 先輩は私と目が合うと、なぜか慌てて視線を逸らせながら応えていた。 そんなに狼狽えるほど、本当に寝惚けているのかしらね? 「まあ、気持ちよさそうにぐっすりと眠っていたようだったし そのせい、ということにしておいてあげるわ。 ……何かいい夢でも見ていたのかしらね?」 元々はいつものからかい半分のつもりだったのだけど。 あの時本当は先輩がどんな夢を見ていたのか。 そのことが気になってついついそんなことを口走ってしまっていた。 「ああ、そうだな、いい夢……だったよ」 すると、先の狼狽ぶりが嘘のように あなたがたまに見せるとても穏やかな笑顔で先輩は応えた。 「そ、そう……それはなによりだったわね」 その笑顔に中てられて、今度は私が狼狽する番になってしまう。 「ああ、なくしたはずのものが。いや、違うよな。 俺の我侭で捨ててしまったはずの、凄く大切なものが、さ。 気がついたら、俺のすぐ近くにあったんだよ」 夕暮れの残光に淡く優しく彩られながら先輩は続ける。 「俺の意思で手放したってのに、俺が酷いことをしたってのに。 俺の、俺たちのために絶対に失っちゃいけなかったって後悔してたのに それが当たり前のようにずっと傍にいてくれてたんだ」 そして今度は私の顔と正面から向き合って。 細めた瞳で私の瞳をしっかりと見据えながら私に告げた。 「それがすっげー嬉しかったのと申し訳ない気持ちで一杯で。 でもきっと謝ったってそれに報いられないって思ってさ。 だから俺は夢の中だけど。いやだからかな。 現実じゃそんな素直にできないから夢の中で感謝したんだよ。 胸を張って堂々と。それの心に確かに届いてくれるように。 『本当にありがとう。これからもよろしく』ってさ」 そしてにっこりと私に向かって満足そうに微笑んでいた。 その先輩の言葉を、笑顔を真正面から受け取った私は 壊れ物を扱うようにそれを胸の奥に大切に仕舞っておいた。 きっとこれから何度不安に惑うことがあっても。 あなたの今日の笑顔を思い出せば乗り越えることができると思うから。 あなたが桐乃に見せるのに、負けないくらいのその優しい笑顔を。 「そう……でも捨てたはずなのに、いつのまにか戻ってきてたなんて。 かの高名な『嵐をもたらす魔剣』のように、とんだ曰くつきの アイテムに呪われていたのではないかしらね、あなたは。 いつかその身に災厄が降り注ぐわよ?」 でもそれとあなたに気付かせるわけにもいかないものね。 私は左手で髪を掻き上げつつ、右手をあなたに向けながら 常の『夜魔の女王』に相応しい声音を鎧った。 私の、五更瑠璃の本当の気持ちが内から溢れ出さないように。 「それもいいかもな。それなら絶対に持ち主の手から離れないんだろ? RPGの呪いの武器みたいにさ。だったら」 でも先輩はそんな私の精一杯の挑発的な態度にも まったく動じもしないで反撃してきた。 「喜んで呪われるぜ。だって俺はもう二度と その大切なものを手放さないって、決めているんだからな。 そのためなら災厄なんて喜んで受けるってもんだ」 ……まったく、この人は。そんな台詞を臆面もなく。 それがどんな意味を持っているのか、判って言ってるのでしょうね? 「自ら望んで呪いを受け入れる、だなんて。 さすがは『呪われしもの』たる変態セクハラどMのお兄さん、ね」 私は先輩に背を向けると、呆れたように 思い切り肩を竦めて、両の手のひらを上に向けた。 だって、声こそ何とか取り繕えはしたけれども。 とてもあなたと顔を合わせていられる状態ではなかったから。 それでも肩を竦める動きに合わせて大きく息を吸い込んで なんとか心を落ち着かせると、もう一度振り返って 渾身の力で『堕天聖の見得』を切った。 だって、この溢れんばかりの光に満ちた気持ちを内に閉じ込めておくのは 闇の業火に苛まれる以上に耐えられるものではなかったのだもの。 「クククッ、でもそれでこそ『闇に囚われしもの』の私と比肩し得る存在。 共に深淵の果てを目指す朋輩として歩んでいきましょう、先輩?」 「ま、まあよくはわからんが、こちらこそだぜ、黒猫」 条理を曲げるための強い願いが『呪い』を生むのだとしても。 その対象が『呪い』を喜んで受け入れるというのならば。 呪い呪われた者同士が、互いに手を取り支え合いながら、 呪いのもたらす災厄を乗り越えて、その願いを目指すのならば。 きっと『呪い』を成就した暁には、それは『祝い』となれるのかもしれない。 願いを阻む障壁を穿った2つの穴の果てに辿り着く理想があるのかもしれない。 私はずっと心を覆っていた闇の衣が遂に払暁を迎えて晴れ渡るのを感じながら。 1年半ぶりにマスケラを脱ぎ去った心からの笑顔をあなたに向けたのだった。
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茹だるような暑さの中、軒下に吊るした風鈴の音が耳に心地よい、そんな真夏の昼下がり。 「ふ~、食った食った。ごちそうさん」 俺は皿一杯に盛られていた昼食のそうめんを平らげ、満腹感に一息ついたところだ。 「はい、お粗末さまっ♪」 軽やかにそう答えたのは、キャミソールにホットパンツ姿、その上から可愛らしいエプロンを身に付けた美少女。 空いたお皿を重ねる仕草に、二本のお下げ髪がふわふわと揺れる。 歳相応に育った女の子らしい体躯だが、色香よりはまだ健康的な印象が先に来るような、笑顔の眩しい女の子。 それは――“15歳になった日向ちゃん”の姿だった。 ――と言っても、ここは数年後の未来ってわけじゃない。 細かい事情は省くが、ここは16歳の黒猫と、15歳の日向、14歳の珠希ちゃんが存在する世界。 まあ、俗に言う〝平行世界(パラレルワールド)〟ってやつだ。 更には、ここでは俺はその三姉妹の「義理の兄貴」ということになっていたりする。 以上、前作の説明終わり。 まあそんなわけで、今は夏休みの真っ只中。 黒猫と珠希ちゃんは午前中からバイトに出掛けていて、家には俺と日向の二人だけ。 長期出張になっている両親から生活費は送られてきているのだが、兄妹4人を養うのはそれでも結構大変で。 黒猫と珠希ちゃんはアルバイトで家計を助けているってわけだ。親孝行な娘たちだよな、大したもんだ。 何でその二人だけかと言えば、俺と日向は今年受験なので、進学するまでは学業優先でバイトは免除ってことらしい。 「片付けなら俺がやるぜ? 昼飯作ってもらったしな」 「ヘーキだよこのくらい。それに、作ったって言ったって、あたしじゃこんな簡単なものしかできないしさ」 てきぱきとお皿を流しに運ぶ日向だが、何処となく申し訳なさそうな口振りだったりする。 と言うのも、両親が長期不在なため、当面の家事は兄妹で当番制。 料理に関しては基本黒猫がメインだが、日向や珠希ちゃんも週に1~2回は当番が回ってくるのだ。 そんな中、料理は大筋で何でもこなすが、メニューが和食寄りな黒猫と。 それに対するように、珠希ちゃんのほうは洋食のレパートリーを増やしつつある。 ……ホント、黒猫を器用と言うなら、珠希ちゃんは多才と言うか。やたらスペック高いんだよなぁ。 一方の日向は、今のところそれほど凝った料理は作れない。 性格が割と大雑把なせいか、あまり手の込んだレシピは不得手のようだった。 俺にしてみれば、立派に食えるモンが作れるだけ十分大したもんだと思うが……。 だがどうやら日向はそのことを少し気にしているらしい。 「まぁそう言うなって。旨いモン食わしてもらった礼だ」 「え……、お、美味しかった?」 「おう」 俺のその言葉に、日向は頬を赤らめてもじもじしている。 よく分からないが、やけに嬉しそうだ。 別にお世辞を言ったつもりは無いんだがな……実際旨かったし。 「お、お礼って言うならさ。片付けはいいから、後でちょっと……お願いがあったり……」 「ん、何だ?」 「その……、べ、勉強……見てほしいんだケド……」 「勉強?」 何だ、そんなことか。 思えば11歳のこいつも、よく宿題を教えてーってせがんできたっけ。 それを今更「お願い」とか、何を気兼ねしてるんだか。 「あっ、でも……キョウ兄ぃも自分の勉強あるし、忙しかったら別にっ……」 「アホか」 俺は、わたわたと手を振る日向の横に並び、その頭をくしゃっと撫でる。 「にゃっ?」 「お前が遠慮なんかする柄かっての。んなもん、お礼と言わずにいつでも見てやるって」 「ほ、ホントっ?」 「ああ。それ終わったらちゃぶ台のとこに勉強道具持って来いよ」 「……うんっ!」 ぱあっと明るい笑顔になって、元気良く返事をする日向。 こいつ、“黒猫”の妹なのにどこか“犬っぽい”ところがあるんだよな。 こうやって構ってやると、反応が素直というか、すぐ表情に出るというか。 尻尾が付いてたらさぞぱたぱたと振られていそうだ。 やっぱり日向はこうやって笑っていたほうがこいつらしい。 ま、たまには兄貴らしく、妹の面倒を見てやるとしますかね。 ☆ 後片付けを済ませ、日向が自分の部屋から教科書やらノートやらをお茶の間のちゃぶ台へ運んでくる。 何でわざわざここで勉強するのかというと。 ――昭和の香りを色濃く残すここ五更家には、当然クーラーなんてものがあるわけもなく。 冷房器具は茶の間にある扇風機ひとつだけだからだ。 まあ、元々俺もそれ程クーラーに頼ってたわけじゃないし、扇風機ありゃ上等だ。 逆にそっちのほうが集中できる位だな。 「にゅふ、キョウ兄ぃに勉強見てもらうなんて、スゴイ久しぶりっ」 「そうだっけか?」 割と良く宿題を手伝わされている気がするが……って、そりゃ“日向ちゃん”のほうか。 この歳ともなるとちゃんと一人で頑張ってたのかね。感心感心。 「さて、何からやるか」 「うーん……、じゃあ数学からにしよっかな」 教科書を広げ、ぺらぺらとページを捲る。 おおぅ、ちゃんと中3の教科書だぜ。いや、この世界じゃ当たり前なんだけどね。 こうして改めて目の当たりにすると、その事実を実感するというか。 こいつももう受験生なんだよなぁ……。 ん? 受験といえば。 「そういやお前、高校どこ受けんの?」 ふと頭に浮かんだ質問を投げかけてみると。 「……え、えっと……、…………キョウ兄ぃと同じとこ……」 日向は一寸口籠もった後、少しだけ言い辛そうに答えた。 「弁展? ……自分で言うのも何だが、あそこ結構偏差値高いだろ。お前そんなに頭良かったっけ?」 うん、我ながら失礼な台詞だとは思う。 でも11歳のこいつは、夏休みの宿題を最後の三日間で泣きながらやるような、お世辞にも勤勉とは言えない子だったはず。 黒猫もよくそれで頭を悩ませていたっけなぁ……。 それとも、こっちの世界じゃ割と賢い子だったりするのか? 「う、うるさいなっ。……だからちょっとガンバってるんじゃん」 ちょっと剥れて、拗ねたような返事を返す日向だった。 ……なるほど、どうやら頑張らないとヤバい程度には元のままのようだ。ちょっと安心したぜ。 安心というのも語弊があるが、あんまりイメージが変わっても困るしな。キャラ崩壊になりかねん。今更という気もするが。 まあ、何にせよ目標を持つのはいいことだと思う。 『目標を高く掲げ、自分自身が納得できるまで、それに向かって全力を尽くす』 ――お前の姉ちゃんも、そうだったからな。 「ふむ。それじゃまあ、その頑張りを見せてもらうとするか」 「任せてっ! ……っと、チョットだけ待ってね」 俺の言葉を一旦遮り、日向は教科書の山の中から朱色の小さなケースを取り出す。 その蓋を開け、その中に納められていたある代物を取り出し、それを自らの両目に翳した。 それは――人類の叡智が生み出した、至高の装具。 その名を、『眼鏡』――! 「……め……ッ、……眼鏡っ娘……だと……!?」 「ん? あれ、キョウ兄ぃの前でかけたことなかったっけ」 「お……お前、いつから……?」 いつから、俺が眼鏡っ娘萌えだと知っていた……ッ!? 「最近だよ? ガンバりすぎちゃったせいか、少し視力が落ちちゃって……。でも、勉強するときだけだよ、かけるの」 「そ、そうか。そういうことか……ちょっと焦ったぜ」 「んにゃ? なんでアセるの?」 「いや、こっちの話だ。気にするな」 一瞬、俺の嗜好を突いた精神攻撃かと思ったが、どうやら天然ものらしい。 この反応だと、俺の眼鏡属性はこいつには知られてはいないようだ。 ほっと胸を撫で下ろす。知らないならそれに越したことはない。 兄として、あまり妹たちに弱みを握られるのは芳しくないからな。 「ホントはコンタクトにしたかったんだけどさー。 キョウ兄ぃのことだから、どーせあたしが眼鏡かけると『地味だ』とか言うだろうし」 「いや! 眼鏡でいいッ! 眼鏡最高!!」 思わず力説してしまったが、ここは断言せざるを得ない。 眼鏡こそ人類の至宝! コンタクトなど邪道の極み!! 「わっ、ど、どーしたのっ。急に大声出してさ」 「あ、いや……その、何だ。眼鏡のほうが、お前には似合ってるよ」 「え……ホントに?」 「ああ」 と、まあ、場を取り繕うために出た咄嗟の台詞ではあったが。 俺的眼鏡補正がかかっているとは言え、実際可愛らしい赤いフレームの眼鏡はこいつに良く似合っていた。 日向が言うほど地味な印象は無く、むしろお洒落なアクセサリーにすら見える。 これを選んだのが日向自身だとしたら、意外といいファッションセンスを持っているのかもしれない。 「……えへへ、そう言ってもらえると嬉しいな」 ほんのりと頬を朱に染めてはにかむ日向(眼鏡装備)。 うぐっ……こ、これは本当にやばい。何この眼鏡っ娘、反則的に可愛いぞ……!? これがエロゲーのイベントシーンだったら、プリントスクリーン押して壁紙にしているところだ。間違いなく。 にしてもあの地味猫が、まさかこんな隠し技を持っていたとは……。 とりあえず今はこいつが妹の立場で良かったぜ。そうでなければ自制が効かなかったかもしれん。 「よーし、張り切って勉強するぞーっ!」 褒められて気を良くしたのか、日向は勢い良く広げた問題集に取り掛かった。 まずは余計な口出しはせずに、お手並拝見といこう。 ――それにしても、眼鏡といえばこの世界の俺は『秘蔵コレクション』を一体何処に隠しているんだろう。 ベッドの下か、押入れの奥か。和室だし、畳の裏という手もあるか? はたまた天井裏という可能性も……。 とにかく、後で確認しておかないとな。今度こそ、俺の尊厳は断固として死守せねばなるまい――! と、人が勉強している隣でそんな不埒なことを考えているうちに、日向のほうは一通りの設問を解き終えていた。 問題集を受け取り、その答え合わせをする俺に、日向が自信なさげに問いかけてくる。 「……どう、かな」 「ふむ……。確かに、頑張った成果が顕著に現れているな」 算数の宿題でひーひー言っていた頃の日向ちゃんに比べたら、その差は歴然と見て取れる。 だが、それでも細かいところでのミスが目立ち、正直弁展に合格できるかと言えば微妙な線ではあった。 「……目標を持って頑張るのはいいことだと思うが、無理して弁展目指さなくてもいいんじゃないか? 別にそこじゃなくても、もっといい高校は他にいくらでもあるだろ」 つい、そんなことを口に出してしまう。 だがこれは、別に暗に諦めを促しているわけじゃない。 一言言っておかないと、こいつは自分の身体の限界を超えてまでも無理をしそうで心配になったからだ。 実際に、多少なりとも視力が犠牲になっているのは確かなんだし……。 「……うん。自分でもさ、ちょっと厳しいかなとは思ってるんだけど……。でも、やっぱり弁展行きたいし」 「何でそんなに拘るんだ? 特別そんなにいいところでもねえぞ?」 「いいところとかじゃなくて……、キョウ兄ぃと同じ高校に行きたいんだもん」 ……何とも単純な理由だった。 まあ、薄々そんな気はしていたが。 「そう言ってもらえるのは嬉しいが……、お前が来年弁展に入学したとしても、俺は今年で卒業になっちまうんだぜ?」 「うん……分かってるけど」 「あ、でも黒猫がいるか。あいつまだ一年だし、お前が入学してから2年は一緒に通えるな」 「……ルリ姉が、羨ましいな」 「ん?」 「だって、1年間だけだけど、キョウ兄ぃと一緒に学校に通えるんだもん」 寂しそうに呟く日向。 例え同時期に通うことはできなくても、それでも俺の歩いていた道を追いかけたい、ということだろうか。 「はぁ……、キョウ兄ぃが留年してくれれば一緒に通えるのにな……」 「縁起でもねえこと言うなよ。……まあ、何だ、高校は無理でも、大学なら一緒に通える時期もあるだろ?」 「えっ?」 この世界での俺と日向は3歳違いだから、ストレートに行ったとして、四年制の大学なら1年間は一緒に通える計算だ。 「……そっか、大学まで行けばキョウ兄ぃに追いつけるんだ……」 「まあ、お前にその気があればの話だけどな」 「……うん。そうしたい。――そうなれたら、いいな」 少しだけ表情を明るくした日向の頭を、ぽんぽん、と軽く撫でてやる。 「……き、キョウ兄ぃ?」 「だったら、高校受験くらいで躓いてもらっちゃ困るな。仕方ねえ、ちゃんと合格できるレベルになるまで面倒みてやるよ」 「ほ、ほんと!?」 「おう。この成績優秀な先輩に任せとけ」 大見得を切って胸を張る。 正直どう転ぶか分からないが、乗りかかった船だ。 まず教える側の俺が、自信の無い素振りを見せるわけにはいかないからな。 「……で、でも……キョウ兄ぃだって自分の受験勉強あるし、メイワクじゃ……?」 「だからそんな遠慮すんなってさっきも言っただろ? 俺は今更慌てて勉強しなくても十分合格圏内だっての。 それに、人に教えるっていうのも結構いい勉強になったりするんだぜ?」 「そ、それならいいケドっ。……キョウ兄ぃと一緒に勉強かぁ~、にゅふふっ」 随分と嬉しそうな様子の日向を見て、俺はつい失笑を漏らしてしまう。 なんというか、遊園地に遊びにいく約束をした子供みたいな反応だったんだよ。 勉強するのがそんなに楽しみなのかね? 「むぐ……そ、それにしてもさ、キョウ兄ぃのクセに頭イイなんて、世の中オカシイよねっ。基本へたれなのにさーっ」 「お前な……前言撤回するぞ?」 「わっ、嘘ウソ! お願いします、先生っ!」 そんな俺に対してちょっとだけ憎まれ口を叩く日向だが、まあ半分は照れ隠しだろうから今回は大目に見てやろう。 「よーし、なんかすっごくやる気出てきたー!」 腕まくりをする真似をして、日向は再び問題集に取り掛かった。 どうやら、やる気は十分。……となれば、もう一押ししておくか。 「――そうだな、頑張って来年見事弁展に合格した暁には、お前の欲しいもの何でもひとつプレゼントしてやるよ」 後は、このやる気を持続させること。 モノで釣るというのもあざとい気がするが、それなりの効果はあるだろうからな。 「な、なな、何でもっ?」 「ああ。でも、俺の懐事情の許す範囲にしといてくれよ?」 「……そ、それなら、お金のかからないもので……ひとつお願い、しちゃおうかな……っ?」 「遠慮しなくていいんだぞ? 滅多にない機会なんだし」 普段は横柄に振舞って見えるが、こいつ性根は結構謙虚なのかね? そんなら余計に、こんな時くらい多少の我侭も聞いてやりたくなるってもんだ。 「うん、だから……一番欲しいもの、お願いしようかな……って」 「おう。何でも言ってみろ」 お金のかからない、でも一番欲しいもの……ねぇ。 まあ本人がそう言うなら、俺は全力でそれを叶えてやるだけだが。 返答を待つ俺に対し、日向は大きく息を吸い込み、意を決するように言った。 「そ、それじゃっ……、あ、あたしが合格できたら、キョウ兄ぃと……き、キ……」 「き?」 ……何だ? ぼっ、と顔を真っ赤にした日向は、口籠もって言葉尻を濁す。 お陰で、肝心なところが聞き取れなかった。 「すまん。もう一度言ってもらえるか?」 「……だっ、だから、……あたしに……キ、……キ……」 「――キス、ですか?」 …………。 「「 う わ あ ぁ ぁ ぁ ー ー っ ! ?」」 不意に割って入る、この場に存在しない筈の第三者の声に、俺と日向は文字通り飛び上がった! 見ると、いつの間にか日向の背後に見慣れたゴスロリ服姿が佇んでいる。 だが、服装は見慣れたものであっても、身に纏う少女は俺の記憶の中のそれとは違っていて。 肩口に切り揃えられた髪、まだあどけなさの残る顔。 小ぢんまりとした背丈に、アンバランスな胸元の丸い膨らみ。 そこにいたのは、14歳に成長した“この世界の珠希ちゃん”だった。 「な、ななな、な……っ!」 「まったく、ちょっと目を離すと油断も隙もないですね、お姉ちゃんは。私たちの留守を狙って、兄さまにちゅーをねだるなんて」 「ち、ちゅー!?」 「うわーっ! うわーっ!? 何でもない、何でもないっ!」 大声を出す日向は、さっきよりも更に顔を上気させてじたばたと悶えている。 しかし『ちゅー』って……。流石の俺も一瞬驚いたが、珠希ちゃんは日向が俺にまさか『キス』をお願いするとでも思ったのか? んなばかな。だって俺たち兄妹だぜ? その証拠にホラ、日向もこんなに動揺してるじゃねえか。それだけ心外だったってことだろ? 「て、てか珠ちゃんっ、帰ってきたなら『ただいま』くらい言ってよっ!」 「だって、お姉ちゃんが二人きりなのをいいことに兄さまを誘惑してるんじゃないかと思って、こっそり偵察を」 「し、してるワケないでしょー! ていうか珠ちゃんだけには言われたくないよ!?」 「ちゅーしようとしてたくせに」 「ししし、してないからッ!」 ……相変わらず、こっちの世界の日向と珠希ちゃんは張り合うなぁ。 まるで誰かさんたちを見ているようだ。 まあどっちにも言えることだが、別に仲が悪いってわけじゃなくて、どっちかっていうと子猫同士のじゃれあいって感じだが。 「それにしても珠希ちゃん、随分早いな? いつもバイトは夕方までじゃなかったっけ」 傍観しているわけにもいかず、やんわりと横槍を入れてやる。 時計を見ると、まだ午後2時を廻ったくらいだ。 「今日は夕方からみんなでお祭りに行く予定じゃないですか。だから少し早く上がらせて貰ったんです」 あれ、そうなの? 言われてみれば、今日は近所で毎年花火大会がある日だったっけ。 「そういうわけでお姉ちゃん、いつまでも油売っていていいんですか?」 「へ?」 「今日のお買い物、お姉ちゃんの当番ですよね? 早く行ってこないと、出掛ける時間に支度が間に合わないんじゃないですか?」 「うわ、そうだった!」 珠希ちゃんに言われて、日向はあたふたとちゃぶ台の上の勉強道具を片付け出す。 「あんまり急いで、眼鏡外し忘れるなよ?」 「わわっ」 慌てて眼鏡を外し、ケースに仕舞う。 ……俺が言わなきゃ、そのまま出掛けて行っただろうことは想像に難くない。それもアリっちゃアリだが。 「眼鏡……?」 その言葉に反応し、珠希ちゃんが訝しげな声を漏らした。 「あれ、珠希ちゃんも知らなかったのか? 何か最近視力が落ちたとかで、勉強のときは眼鏡かけてるんだと」 「へぇ……そうなんですか」 何か思うところでもあるのか、珠希ちゃんは顎に手をやり、俺と日向の顔に交互に視線を投げる。 「……まさか、〝最終宝具(ラグナロク)〟まで持ち出して兄さまを誘惑するなんて……。いよいよ本気で……?」 「へ? らぐな……って、何、またいつもの厨二病(びょーき)?」 「 何 で も な い か ら !! ほら、とっとと買い物行ってこい、な!?」 「わ、分かったから押さないでってば!」 勉強道具を抱えた日向を、半ば強引に部屋の外へ押し出し襖を閉める。 その足音が自室のほうへ遠ざかっていったのを確認し、ほっと一息。 というか、だ。 「 何 故 お 前 は 知 っ て い る !?」 「……ふふっ、この千葉の魔天聖〝聖猫〟の〝真眼〟を以ってすれば、兄さまの隠し事なんて全てお見通しです」 ……こ、怖え。正に適齢期の厨二病も然ることながら、この珠希ちゃんは何というか、底が知れない空恐ろしさがある。 そもそも、何処となく11歳のときとキャラが重なる日向に対し、珠希ちゃんは6歳のときとは全く違う。 今の珠希ちゃんは14歳に成長しているわけだから、そこには8年の歳月の経過があるわけで。 倍以上の年齢になっているんだから、性格や言動が一変していても不思議はない……といえばそうなのだが。 それにしたって……“どうしてこうなった”と言わざるを得ない……。 「私が最後の手段として取っておいたのに……まさかお姉ちゃんに先を越されるなんて」 「……何を企んでいたのかは怖いから聞かないが、日向は別にお前が思ってるような効果を狙ったわけじゃないようだぞ?」 「そうみたいですね。……それなら、このことはまだ私と兄さまの二人だけの秘密、ってことにしておきましょうか」 「……そうしてくれると嬉しい」 下手をすると公開処刑になりかねんからな。 ここは願ってもない提案を有難く受けさせて貰おう。 ……しかし、よりによって一番知られたらまずい相手に知られてしまった気がする……。 そんなやり取りの中、先程日向を押し出した引き戸が再び開き、バッグを提げた日向がちらっと顔を覗かせた。 「それじゃ、ちゃちゃっと行ってくるケド……二人だけになってもヘンなことしたらダメだからね!」 「するかっ!」 「変なことって何ですか?」 釘を刺す日向に対し、ぽややんと天然口調で返す珠希ちゃん。 こういうときの珠希ちゃんは、厭味も邪気もまるで感じないから余計に始末が悪いんだよな……。 その証拠に、日向もそれ以上強くは言えず。 「と……とにかく! キョウ兄ぃ、お願いね!」 「分かったから、妙な心配してないでさっさと行ってこいっ」 俺の言葉に、渋々といった感じで日向は買い物に出掛けていった。 ――そうなると、この家に今度は珠希ちゃんと二人きり、ということになるわけだが。 日向にはああ言ったものの、正直嫌な予感しかしない。 天然珠希ちゃんはともかく、小悪魔モードの珠希ちゃんにどう対処していいのか。 ぶっちゃけ、未だに良く分からん。 果たして、俺の理性はどこまで耐えられるんだろう……。 「――それじゃ兄さま、私はお先にシャワーを頂いてきますね」 「し、しゃわー!?」 にわかに発せられたその単語に、つい過敏に反応して声色が裏返ってしまう。 くっ、我ながら情けないことこの上ない。 「? 早くしないと、後で姉さまたちも使うでしょうし」 「あ、ああ……そうだよな。夕方から出掛けるんだったか」 どぎまぎする俺に対して、珠希ちゃんはおっとりした調子で小首を傾げている。 い……いかんいかんっ。一体何を想像しているんだ、俺は。 これじゃ、単に俺が意識し過ぎなだけじゃねえか。 いくら魅力的な女の子に成長しているとはいえ、今の珠希ちゃんは妹なんだからな。義理だけど。 平静を取り戻そうと大きく息を吐く俺に、ふと珠希ちゃんが耳元で囁く。 「……あの、兄さま?」 「ん?」 「……覗いちゃ、駄目ですよ?」 「覗くかッ!!」 俺が平常心を保とうとしてる矢先にこれだよ! これだから苦手なんだよ、“この珠希ちゃん”はっ! 「ふふっ。意気地なしですね、兄さまは♥」 くすくすと笑いながら、珠希ちゃんはお風呂場のほうへ去っていった。 くそっ、姉妹揃って似たような捨て台詞を吐きやがって。 意気地とか以前に、俺はお前の兄貴だっての! ……はぁ……、納得いかねえ……。 ☆ ――その後しばらく、俺はお茶の間で勉学に勤しんでいた。 別に、珠希ちゃんに妙な誘惑をされたからじゃないぞ? 何かに没頭していれば、余計なことを考えずに済むからな。 一意専心、煩悩退散――。 そのあまりの集中力に、引き戸が開かれた音にも気付かなかったくらいだ。 「あの……兄さま?」 掛けられた声に顔を上げると、いつの間にか珠希ちゃんが襖の横に立っていた。 集中していたせいか時間の経過が早く感じられるが、あれから既に小一時間が経過していたようだ。 シャワー上がりの珠希ちゃんは先程のゴスロリ服ではなく、白いブラウスとキュロットスカートといった部屋着に着替えている。 首に巻かれたタオルに触れる、まだ濡れた髪が少しだけ艶かしい。 「ん、どうした。そんなところに突っ立って」 「その……ご一緒に風に当たらせてもらってもいいですか?」 しおらしく訊ねてくる珠希ちゃん。 風……って、ああ、湯上りだから扇風機で涼みたいわけか。 そのくらい、いちいち断りを入れることもなかろうに。 「全然構わないぞ。つーか、そんなことで気ぃ使うな」 「……ふふっ、そうですね。ありがとうございます。兄さま♥」 無邪気な笑顔を浮かべ、珠希ちゃんは俺の元へとやってくる。 それは何処となく、『ご本を読んでください』とせがんで駆け寄ってくる6歳の頃の姿に重なった。 こういうところが、やっぱり珠希ちゃんだと思わせるんだよな。 何だか少しほっとするぜ。 「兄さま、少し座を引いてもらえますか?」 「うん? ……こうか?」 そう言われて、俺は座っていた位置を座布団ごと少し後ろにずらす。 風に当たりたいなら扇風機のほうを動かせばいいものを……まあ別にいいけどな。 「それじゃ失礼して……ん、しょっ……と」 「んがっ!?」 思わず素っ頓狂な声をあげてしまう俺。 だって、それも仕方ないだろっ。 珠希ちゃんは、当然といったように“俺の膝の上”にその腰を下ろしたんだから! 「な、ななっ……なんでわざわざそこに座んの!?」 「何でって……兄さまが遠慮しなくていいって言ったんじゃないですか」 勿論、当の珠希ちゃんには悪びれた様子など微塵も無く。 「いや、言ったけどね!? それは扇風機に当たりたいって言うからでっ。てか、風に当たりたいなら扇風機を動かせばいいだろ!」 「駄目です。言いましたよね、『一緒に風に当たっていいですか』って。だから、兄さまも一緒に風に当たれるこの位置じゃないと」 至極尤もらしいように言ってはいるが、屁理屈にしか聞こえねえ! 「それに、兄さまの膝の上は私の〝領域(テリトリー)〟って、幼い頃から決まっているんですよ? ふふっ」 た、確かに、6歳の珠希ちゃんは何かと俺の膝の上に座ってきていたが……っ。 三つ子の魂百まで、とは言うが、6歳の頃の習慣って14歳になっても続くもんなの!? いや、だからと言ってこれはマズいだろ! あなた、黒猫姉妹の中で一番ちっちゃいけど、いわゆる“女の子パーツ”の発育だけは一番いいんですからっ! こう、膝の上に感じるあったかくて柔らかい感触が、健康な男子にとっては物凄く危険なんです! 「そっ、そうは言ってもだな……っ」 「きゃんっ。……あまり動かないでください、兄さま。くすぐったいです」 もぞもぞと体を動かしこの体勢から逃れようとしたが、珠希ちゃんの甘い声に阻まれてしまう。 つーか、動くと一層ヤバいことが分かった。 珠希ちゃんが膝の上で揺れる度、何というか……女の子特有のぷにっとした弾力が直に伝わってきて……! 「ちょっと涼むだけですから。その間だけ……駄目ですか?」 珠希ちゃんは、座った姿勢のまま顔だけ振り返り、上目遣いで背後の俺を見上げてそう懇願する。 湯上りで火照った表情。その中で真っ直ぐに俺を見つめる、潤んだ二つの瞳――。 くっ、何て強力なおねだり攻撃なんだ……! 可愛い妹にこんな顔をされたら……シスコンの俺が断れるわけないだろ! 「わ、分かったよ。……少しの間だけだからな」 「ふふっ、ありがとうございます、兄さま……♥」 そう言って、珠希ちゃんは安心したように俺の胸にその背中を預けてきた。 薄布を通じて伝わってくる温まった体温と、柑橘系のシャンプーの香りが、俺の五感を擽る。 涼むどころか、余計に熱が上がる気がするんだが……、そう思うのはまた俺が意識し過ぎなせいなのかね……。 はぁ……と、ため息混じりに膝の上の妹姫を見下ろすと。 ……胸元が大きく開いたブラウスを着た珠希ちゃんの、零れんばかりの白い双丘が俺の視界に飛び込んできて――! 「――――ッ!?!?」 ヤバい、この上なくヤバいものを見てしまったッ! つーか割とはっきり見えたぞ!? も、もしかしてその下に何も着てないの!? ぐっ……ま、マズい……ッ! こんな密着した状態で“本能(リヴァイアサン)”を目覚めさせてみろ、それこそ兄の沽券に関わる……ッ!! 慌てて俺は手元の参考書を目の前に広げ、数式を片っ端から頭の中に放り込む。 色即是空、心頭滅却、記憶抹消――ッ! 「? どうしたんですか、兄さま?」 珠希ちゃんがまた肩越しに振り返り、怪訝そうに問い掛けてくる。 気持ちは分かるが、今は参考書から視線を逸らすわけにはいかない。絶対にだ。 もう一度アレを見てしまったら、そこで俺の人生はジ・エンドだ……ッ! 「い、いやっ、何でもないっ。只の勉強の続きだっ」 「……そうですか。兄さまも、少し休憩にしたらいいのに」 ちょっとつまらなそうに言って、珠希ちゃんは再び俺にもたれかかる体勢に戻った。 そうして俺は、気付かれない程度に数回深呼吸をして内なる動揺を鎮める。 すぅ……はぁ……、落ち着け、俺……っ。相手は妹……、そう、この世界では妹なんだ……っ。 「このブラウス、もうお胸のところがきつくてボタンが上まで留まらないんですよね」 「だったらサイズの合った服を着てくださいお願いします!!」 壮絶に突っ込みを入れる俺だった。 こ、この子は……っ! 分かっててやってる小悪魔なのか、それとも天然の為せる業なのか、もう全く判断が付かん!? 「だって、まだ着れるのに勿体無いじゃないですか」 「そ、それはそうかも知れんが……っ、それにしたって女の子がそんな無防備な格好しちゃダメだろ!?」 「大丈夫ですよ。“こんな格好”見せるのは、兄さまにだけ……ですから」 珠希ちゃんは少しだけ恥ずかしそうに、それでいてきっぱりとした口調で言う。 俺にだけ……ってのは、“家族”だから多少だらしないところを見られても平気、ってことか? それとも“兄貴”として信用されてるってことなのか。 言われてみれば当たり前のことだ。 やっぱり、俺のほうが意識し過ぎなんだよな。相手は妹なんだから。 「分かったよ。でもいくら家族の前だからって、程々にな?」 「……はぁ……、……全然分かっていませんよね」 「へ?」 何故か思いっきり呆れられた感じでため息をつかれたぞ? 「……俺、何か変なこと言った?」 「兄さまは、へたれってことです」 …………三姉妹全員からへたれ呼ばわりされる俺って……。 くっ、なんかちょっと旅に出たくなってきた。 「まあ、そういうところも兄さまらしいですけど」 「それ……一応フォローなんですかね……?」 がっくりとうな垂れる俺に、珠希ちゃんはくすくすと笑いながらその後頭部を俺の胸に押し当てる。 「……あ、まだお髪が濡れているから、兄さまの服が……」 「ん。ああ、別にいいよ。すぐ乾くし」 珠希ちゃんの濡れ髪の水分を吸って俺のシャツが少し湿ってしまったが、別段気にする程でもない。 「でも……。……そうだ、兄さまっ。お髪を拭いてください」 そう言って、にこにこと首に掛けていたタオルを俺に手渡してくる。 「な、何で俺がっ?」 「昔はよくこうやって拭いてくれましたよね?」 うん、確かに6歳の珠希ちゃんにはそんなことをしてあげた記憶もあるが。 「それは小さい頃の話だろっ? 今の歳になって、それは……」 「ふっ……お姉ちゃんの頭は撫で撫でできて、私のお髪は拭けないなんて、一体どういう了見なんでしょうね?」 「よしッ、任せろ!」 二つ返事で快く承諾してやった。 ――っていうか、いつから見ていたんだお前は!? 襖の隙間からずっと覗いていた姿を想像すると凄ぇ怖いんですけど!? 涙目半分、ヤケクソ半分で、わしわしと大雑把に拭いてかかると。 「ひゃん。もう少し優しくしてください」 「わ、悪い」 即座に珠希ちゃんに駄目出しをされる。 ……何ていうかもう、妹と兄というよりは、お嬢様と召使ですよね。この立場。 仰せのとおりに、少し力を弱めてやる。……それこそ撫でるくらいに。 「……こんなもんでいいか?」 「はい……とっても、気持ちいいです……♥」 そこだけ聞けばエロゲーの台詞のようだが、無論そんな色っぽい状況ではない。 むしろ、こうしていると、お風呂上りの6歳の珠希ちゃんの頭をバスタオルでごしごしと拭いてやった光景を思い出す。 そう思うと、この膝の上で揺れる柔らかい感触も、不思議とあまり意識しなくなっていた。 ――どのくらいの時間、そうしてやっていただろう。 俺の胸にもたれ掛かる珠希ちゃんの重みが、段々と増してきたかのように思うと。 「…………すぅ……、……すぅ……」 いつの間にか、膝の上の妹姫は安らかな寝息を立てていた。 小さい頃から確かに寝つきのいい子だったが、この状況でも寝るのかよ。 でもまあ、俺も床屋で眠くなるほうだし、気持ちは分からんでもないか。 それに、何だかんだ言ってバイト帰りだったし、疲れているのかもな。 ……少しくらい寝かせておくか。 俺は慎重に体をずらし、起こさないようにゆっくりと珠希ちゃんの体を俺の座っていた座布団の上へ横たえる。 まあ、こいつは一度寝たらちょっとやそっとじゃ起きないから、そんなに気をつけなくても大丈夫だったかも知れないが。 そして、体を冷やさないよう、部屋からタオルケットを持ってきてそっと掛けてやった。 こうして眠っている顔は、本当に子供みたいであどけないんだけどな。 この子はまるで気紛れな猫のように、天使へ、小悪魔へとその表情をくるくると変える。 まったく、本当に困った妹だぜ……色々な意味で……。 ☆ 俺は、静かな寝息を立てる珠希ちゃんの横で再び参考書を広げた。 すると、10分も経たないうちに玄関が開かれる音がする。どうやらまた誰か帰ってきたようだ。 「――ただいま、兄さん」 お茶の間の引き戸を開けたのは、黒猫だった。 今日の服装は、夏コミバージョンの私服。上着は着ておらず、ノースリーブで涼しげな装い。 流石にバイトに行くのにネコミミまでは装着していないようだ。 「おう、お帰り。お前も今日は早上がりなんだな」 時計は午後3時半に差し掛かろうというところ。 いつもなら帰ってくるのは夕方だから、2時間くらいは早い。 理由は訊くまでもなく、珠希ちゃんと同じだろう。 「ええ。……あら、珠希、寝ているの?」 「ああ、帰ってきてシャワー浴びたらここで寝ちまって。バイトで疲れてるんじゃないか?」 多少端折ったが嘘は言ってないぞ? 「まったく……仕方がないわね」 小さくため息をつく。 珠希ちゃんの寝付きのよさと寝起きの悪さは黒猫も熟知しているから、無理に起こそうとは思わないようだった。 「このタオルケットは、兄さんが?」 「ん? ああ、湯冷めして風邪でもひいたらあれだからな」 「……ふふっ、相変わらず優しいのね……京介」 そう言って、穏やかに微笑む黒猫。 その暖かな笑顔に、不覚にも一瞬見惚れてしまう。 日向も、珠希ちゃんも、ここでは可愛い『妹』だが、やっぱり黒猫は特別だ。 可愛い『妹』ではあるが、それ以上に、大切な『恋人』でもある。 それは今はまだ、俺と黒猫だけの秘密だったりするのだが――。 「……そ、そんなんじゃねえよ。当然だろ、兄貴として」 「フフッ、そうね。気が利く『兄さま』ね」 今度はくすくすとからかうように笑う。 そうして黒猫は台所のほうへ歩いていき、冷蔵庫から作り置きの麦茶をコップに注いでこくこくと飲み干した。 「兄さんも飲むかしら?」 「いや、俺はいいよ」 「そう。そういえば、日向は出掛けているの?」 「ああ、買い物に行ってる。でも、そろそろ帰ってくる頃じゃねえかな」 「そうなの。……それなら、先に私もシャワー浴びてこようかしらね」 使い終わったコップを手際よく洗い、お茶の間を出て行こうとする。 と、襖の前で足を止め。 「私がシャワーから上がったら、珠希を起こしてもらえるかしら。支度をさせないといけないから」 「ん、了解」 寝起きの悪い珠希ちゃんを起こすのは、いつも俺の役目。 このあたりは、兄妹の阿吽の呼吸だ。 俺の返答に満足げに口元を緩め、黒猫はお風呂場へと向かっていった。 ……言っておくが、覗かないからな? (if・俺の妹猫がこんなに可愛いわけがないⅡ(後編)へ続く)
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(注)最終巻と同様な黒猫の慟哭描写があります。 黒猫の悲しむ姿が苦手な方はご注意ください。 アニメの最終回放送にあわせて、あの辛い記憶を少しでも和らげるべく 黒猫が京介からの『告白』を受けた後に、如何に大切な人に支えられて 立ち直ったかを書いてみようと思ったのがコンセプトです。 しかし、最初に書き始めた日向だけでも結構な文章量になってしまったのと 辛い記憶は黒猫99スレまでにしたかったのでこの時点でアップしました。 たまちゃん、父母猫、沙織の話も大筋は考えてはあるので またいずれの機会にまとめたいところです。 それでは相変わらず拙い作品ですが少しでも楽しんで頂ければ幸いです。 ------------------------- 「我が生涯に最大の呪いを……思い知りなさい!」 振り返って歩き出した途端、泣き腫らした瞳から 再び止め処なく涙が溢れ出してくる。 でも大丈夫。もう涙はあの人には見えないから。 ふらつきかけた両足を無理やりにでも動かして歩き続けた。 顔は涙と雨でぐしゃぐしゃでも、背中からなら毅然と見えるように。 あの人の出した決意を揺るがせることのないようにと。 街灯を5つばかり過ぎてから、無理やりに飲み込んでいた嗚咽が ついに抑えきれなくなって口から漏れ出でた。 でも、ここまでくればもう平気よね。 すべては予言どおり。『運命の記述』通りの事。 この結末はすべては私の望みの通りなのだから。 だからこの胸を貫く痛みも。吹き荒ぶ哀しみも。深淵より出る絶望も。 私は向き合い、受け入れなければならないのだ。 全て仕組まれた罪。 その罪を仕組んだものが自分自身なのだから その罰も償いも自分自身でなされなければならない。 審判が下された今日という日から、それはきっと長い年月をかけて。 私自身が私自身を赦せる様になるその日まで。 逃げることは決して許されない。 だけど今は、今だけは。 自分のためだけに、もう少しだけ……泣いても……いいよね? その場に立ち尽くした私は、再び長い長い慟哭を繰り返した。 * * * 「お帰り、ルリ姉ぇ。ご飯どうするの~?」 玄関が開けられた音を聞いて、あたしは居間から声をかけた。 既に夕飯の時間は大きく過ぎているというのに、ルリ姉が珍しく外出していて あたしもたまちゃんもお腹を空かせて途方に暮れていた。 幸いたまちゃんはさっき寝てしまったけど、そろそろお腹が限界のあたしは なにか軽く用意しようかと思っていたところだったんだけど。 「ルリ姉?どしたの?」 しかし一向にルリ姉からの返事がないので廊下に出てみた。 まあルリ姉があたしに返事がないなんて日常茶飯事だしね。 また何か怪しい電波を受けてぶつぶつ独り言でもいってるんじゃないかと そのときのあたしは思っていた。 でも実際に見たルリ姉はそれどころじゃなかった。 いつもの痛いけれど、自作しちゃうくらいのこだわりのゴスロリ服も あたしが密かに憧れている艶やかな長い黒髪も 見る影もなく雨でずぶ濡れになって。 そして何より血の気の失せた真っ青な顔色と。 普段のカラコンより充血して真っ赤になった瞳で。 悄然とした姿であたしの大好きな姉は立ち尽くしていた。 それは以前も、4ヶ月前に見たあの夏の日と同じ姿だった。 「ル、ルリ姉……まさか……高坂君となにかあったの!?」 あの日と同じと言うのなら、思い当たる理由はこれしかない。 「……なんでもないわ。ごめんなさい、今夕飯を用意するわね」 でもルリ姉もあの日と同じように、なんでもないと応えるだけだった。 やはりあの日と同じ、感情のこもっていない、抜け殻のような声で。 でもだからといって、あたしまであの日と同じように わけが判らず引き下がるわけにはいかなかった。 だって、このままじゃまたルリ姉は。 あの時と同じように絶望に囚われてしまう。 そんな確信が今のルリ姉からは易々と想像できてしまった。 「なんでも……なんでもないわけないじゃないか!!」 突然大声を張り上げたあたしを、驚いたように見つめるルリ姉。 俯いていたときにははっきりしなかったけど、雨とは明らかに違う 涙の流れた跡も見えた。 それを見た途端、あたしの中で湧き上る感情にさらに油が注がれた。 「だってルリ姉、あの時と同じじゃない! 高坂君と別れたあの夏の花火の日の時と!!」 「……同じじゃないわ。だって私はあれから京介とは別れたままだもの」 「そんなことは関係ないよ!! それにそういうってことはつまりは高坂君絡みなんでしょう! どうして……どうして本当のことをいってくれないの!?」 なおも叫び続ける私に、逆にいつもの調子を取り戻したように 落ち着いた声でルリ姉が応えた。 「落ち着きなさい、日向。これは私の問題なのよ…… だからあなたの気持は嬉しいけれど あなたに立ち入ってもらうわけにはいかないわ」 あたしを諭すように声をかけるルリ姉。 いつもあたしが無茶をやって、失敗したり、怪我をしそうになったとき すごい勢いで怒った後、必ず掛けてくれる優しい言葉と 安らぐようなお姉ちゃんの表情と声音で。 あのルリ姉がこんなになるほど辛い気持ちになっているのに そんなときでもあたしの姉をやろうとしているのだ、この人は。 「でも……でも!!」 ルリ姉の落ち着きはらった口調に 思わずいつものように静まりかけた心をあたしは再び奮い起こした。 ここで引き下がってしまったら。 あの夏のときのことが再び繰り返されてしまうから。 抜け殻のようになってしまったルリ姉をもう一度見るなんてこと あたしには絶対に我慢できない。 ルリ姉がいつだってあたしの姉をしようとしているように。 あたしだってルリ姉の妹をしなければならないから。 泣いて帰ってきた姉を、妹として見過ごすなんてことはできない。 そしてこの期に及んでそんな無理をしているルリ姉を なんとしてでも解放してあげたい一心だった。 再び沸き起こる感情に任せて、ルリ姉に私の気持ちを打ち付けた。 「ルリ姉だけの問題じゃないよ!だって!だって!!」 「……日向、あなた……」 「だってルリ姉がこんなんじゃあ…… あたしだって悲しいよ!苦しいよ!!泣けてきちゃうよ!!!」 言葉通りに私の瞳からも涙が零れ落ちていた。 怒っていたと思っていたあたしがいきなり泣き出したの見て さすがのルリ姉も目を見開いて驚いている。 「だから言ってよ、本当の事を!ルリ姉の気持ちを!! あたしじゃ頼りなくて不満かもしれないけれど…… あたしだって『お姉ちゃん』のために何かしてあげたいよ!!」 そこまでまくし立てたところで、あたしは昂ぶった感情を もてあます余りに、思わずルリ姉に抱きついていた。 こんなたまちゃんのような事、ここのところ随分していなかったけど。 ルリ姉の身体は冬の雨で湿った服が冷たかったけれど、 あたしが小さい頃よくした時と同じように ふんわりと優しく受け止めてくれた。 すでに言いたいことをうまく声にもできずに、ルリ姉、ルリ姉と 繰り返すあたしを、ルリ姉はぎゅっと抱きしめてくれた。 「そう……そうね、日向。ごめんなさい」 「あやまら……ないでよ……ルリ姉は……なにも……悪くないよ……」 「じゃあ……本当のことを言うわね?聞いて頂戴、日向」 「……うん」 ルリ姉はそこで一度言葉を切って……そして打ち明けてくれた。 先ほどなにがあったのか。そしてルリ姉の本当の気持ちを。 いつものように飾らずに、まっさらな『瑠璃』の言葉として。 「私……私……京介に振られちゃった……」 「私とは付き合えないって……好きな人がいるんだって……」 「どうしよう……日向。私はもうあの人を京介なんて名前で呼べない……」 「京介のためにお弁当を作ってあげられない。 京介のためにセーターを編んであげられない」 「京介のために笑ってあげられない。 京介のためになにもしてあげられない」 「だって、私はもう彼女でもなんでもないんだもの。 もう二度と結ばれることはないんだもの。 今世でも……来世でも……永遠に……」 あたしを優しく抱きしめていた力が不意に強くなった。 「私は……私は……もう……二度と……」 「イヤ……イヤよ……こんな、こんな結末……」 「私から……京介を……取らないで…… 私に……京介を……諦めさせないで……」 「だって……こんなに好きなのに……大好きなのに!!」 あたしを抱きしめる力はもう痛いくらいだった。 そしてそれ以上にルリ姉の言葉が心に突き刺さるのが痛かった。 ルリ姉の気持ちを考えるだけで胸が張り裂けそうだった。 でも全部受け止めないと。あたしに今できることはそれだけだから。 「こんな運命を……変えたかったのに! こんな未来にならないように頑張ってきたのに!!」 「どうして……ねえ、どうして!?どうして私はいつも こんなに欲しいものを手に入れることができないの!!」 ルリ姉の声は、いつしか先のあたしと同じように叫び声になっていた。 「どうして……どうして…… どうして私は……京介と……恋人になれないの……」 「どうして……私は……こんなにも矮小で…… 望みを果たすことすらできない……情けない存在なの…… 好きな人に届かせるだけの気持ちも想いも足りないの……」 そしてあたしと同じように最後には叫び声は泣き声に変わっていった。 ルリ姉の零す大粒の涙があたしの背中をぽつぽつと濡らしていく。 やっぱり思ったとおり、今まで保留になっていた高坂君との関係が ルリ姉にとって最悪の形で決着がついたのが理由だったんだ。 どうして、高坂君……あんなにルリ姉のこと大好きだといっていたじゃない。 ルリ姉にべた褒めされてたって伝えた時あんなにも嬉しそうだったじゃない。 好きな人ってどういうこと?あれから4ヶ月しかたってないのに 別の好きな人ができちゃうの?あのシャワーを浴びていた人? それとも相手はキリ姉のいってた幼馴染の人なの? 理不尽だと判っていても、高坂君への怒りの感情が込み上げて来る。 今すぐにでも高坂君のところにいって事の真偽を問いただしたかった。 ルリ姉をこんなに待たせたのにいいかげんなことを応えたら 絶対に許せないって言い放ってやりたかった。 あたしの大切なお姉ちゃんを泣かせるなんて一生許さないんだって。 でも、あたしの中にわずかに残っていた冷静な部分が ぎりぎりのところでその怒りを押しとどめた。 だって、ルリ姉は。 こんなに辛い気持ちをあたしに吐き出してくれてるのに。 一言も高坂君を責めることをいってなかったから。 だからあたしがルリ姉にしてあげなければならないことは、 きっと高坂君に怒りをぶつけることじゃない。 「……ルリ姉のせいじゃないよ……ルリ姉のせいじゃないよ」 しゃくりあげながらもあたしは懸命の力で言葉を振り絞った。 「だって……ルリ姉はこんなに頑張ってたじゃない。 おしゃれとかに全然興味がなかったのに一生懸命努力して。 髪型や服装にだってことさら気を配るようになって」 「引っ越してからだって、朝早く起きて高坂君のためにお弁当を作って。 勉強に疲れた高坂君を毎日メールで励ましたり。 クリスマスプレゼントにって睡眠時間を削ってまで編み物をしたり」 自分でも理屈にもなっていないと判ってはいる。 頑張っただけで好きな人と結ばれるなら、きっと世の中 何の諍いもなく、今頃恋人たちの楽園になっていることだろう。 でもそんな幸せをルリ姉だけでなくあたしだって思い描いていたのだ。 初恋だってまだのあたしにもわかるほどのべたぼれのカップルだったから。 あのルリ姉が必死の思いで掴みとった恋人なのだから。 その後故あって別れてしまったけれど、絶対に最後には ルリ姉の気持ちは報われて幸せになるんだって、信じていた。 信じていたかった。ルリ姉を。高坂君を。運命を。 だけどそれは幻だった。適わぬ夢になってしまった。 でもだからって今までルリ姉が頑張ってきたことが 全部全部無駄になってしまうなんてことを許せるわけがない。 だからあたしに今できることは ただひたすらにルリ姉のことを肯定するのみだった。 誰に否定されたって、たとえ本人が許せなくたって あたしは、あたしだけはルリ姉の頑張りを認めてあげるんだ。 「あたしはどれだけルリ姉が高坂君を好きだったのか知ってるよ。 一晩中、高坂君とのことを考えてノート1冊書きあげちゃうくらい」 「どれだけ高坂君のことを想っていたか知ってるよ。 付き合ってた時はまだしも、別れてからだって高坂君のことを 四六時中考えてぼーっとして、危なっかしくて仕方がないくらい」 「どんだけ高坂君のことが好きなんだって あたしたちが呆れ返る位に、ルリ姉はひたすらに想い続けていたよね」 「そんなルリ姉は、本当にきらきら輝いていたよ。 恋する女の子は綺麗になるって本当だってわかった。 そんなルリ姉を見ているだけでこっちまで嬉しかったんだから」 「だから、だから……ルリ姉……」 あたしはルリ姉の身体を力いっぱいに抱きしめ返した。 「だからお願いだから、自分をそんなに責めないで。 そんなに泣かないで。一人だけで苦しんだりしないで。 あたしの大切なお姉ちゃんを否定しないであげて」 「ルリ姉が辛いときにはずっと傍にいるから。 ルリ姉が悲しいならあたしも一緒に泣いてあげるから」 言葉通り、あたしはさらに腕の力を強めた。ルリ姉だけを悲しませないように。 溢れ出す涙はさらに勢いを増していく。ルリ姉の分まで流せとばかりに。 そんなあたしをルリ姉もずっと受け止めてくれていた。 お互いもう何も言葉にもできずに抱き合ったままでひたすらに泣き続けた。 たまちゃんが寝ていて本当によかった。姉の二人が揃って泣いていたら きっとあの子まで泣かせてしまったことだろう。 そんなことになったらたまちゃん大好きなルリ姉のこと。 こんなに素直に気持ちを吐き出して、泣いてくれはしなかっただろうから。 結局あたしは、ルリ姉から本当のことを聞いたところで ルリ姉のために何もしてあげられなかったし これからルリ姉のためにどうしたらいいのかすら見当もつかないけど。 でもせめて、今度こそ最後まであたしはルリ姉の味方でいたい。 一度はルリ姉の気持ちを軽んじてしまったこともあった。 高坂君と別れたときだってきっとルリ姉の妄想の 自業自得じゃないかと考えていた。 でもいつだってルリ姉は、大切な人に対して全力で頑張ってしまうんだ。 自分の身をこれっぽっちも顧みることなく。だからあの時も高坂君と キリ姉のために捨て身の選択をしていたんだと後から解って あたしは心の中でルリ姉に思いっきり謝った。 そんな事、11年間もずっとそばで見ていたあたしが 一番わかっていたはずなのに。いつだってルリ姉はあたしやたまちゃん、 家族のことを優先して自分の幸せを二の次にしていたのに。 だからそんなルリ姉が初めて自分のために抱いた恋心を あたしは今度こそ応援しなくちゃいけないんだって あのときそう決めていた。 電波で妄想癖で、痛い発言ばかりで傲岸不遜な姉だけど。 でも本当は気弱で自信がないのに強がって自爆する恋する乙女なんだから。 よくできた妹のあたしくらいは味方してあげなくちゃね。 そんなことを泣いている間に決意していたあたしだったけど いつのまにか頭に感じる優しくて柔らかい暖かさに包まれて 次第に意識が薄れていった。 * * * 次の日の朝、自分の布団で目が覚めたあたしは わけがわからないまま慌てて飛び起きた。 あれ、どうしてあたしは布団で寝ているの?ルリ姉は? あたしの布団の横には、たまちゃんがいまだ天使の表情で眠っている。 時計をみるとまだ6時半を回ったばかりだ。 ともかくルリ姉に確認しないと。いつもならもうルリ姉は起きているはずだし。 あたしはすぐに居間にいってみたんだけど。 「あら、おはよう、日向」 「……お、おはよう、ルリ姉」 「今日は早いわね。朝ごはんはもう少し待っていて頂戴」 そこにはうちのいつもの朝の日常風景があった。 ルリ姉も普段通りジャージ姿に割烹着で朝ごはんの用意をしている。 あれ、まさか昨日のことはあたしだけの夢?なんて虫のいい考えが浮かぶ。 「ねぇ、ルリ姉」 「なにかしら日向。今は手が離せないから長くなるようなら後にして頂戴」 「あ、うん。えーと、昨日あたしを布団まで運んでくれたのはルリ姉?」 事の真偽を確認したいけど、いきなり本題に入るのはいろいろと怖い。 それにあの時のことを思い返すと、その場の勢いもあったとはいえ あまりにも恥ずかしいことが多すぎるしね。 なので、ひとまずあたりさわりのないところから訪ねてみたんだけど。 「そうよ、まったく……あなたが完全に 眠ってしまったものだから、抱えて運ぶのも一苦労だったのよ。 本当、いつの間にこんなに大きくなっていたのかしらね」 「あ、ごめん……ありがとね、ルリ姉」 「なにを言っているの、日向」 せわしなく台所と居間を行ったり来たりして朝ごはんを用意していたルリ姉は そこではたと足を止めてあたしのほうに向きなおった。 「謝るのも、お礼をいうのも私のほうでしょう?」 今まであたしはそんなことをされた覚えがなかったから 一瞬目を疑ってしまったくらいだけど。いつも傲岸不遜なルリ姉が 神妙な顔つきであたしをしっかりと見つめて。 わたしに頭を下げていた。 それはきっと、昨夜のように素の『瑠璃お姉ちゃん』として。 「私の話を聞いてくれてありがとう、日向。 それに妹に泣きついた情けない『お姉ちゃん』でごめんなさいね」 顔を上げたルリ姉の瞳はまだ腫れぼったさが残ってはいたけど、 昨日の姿がそれこそ夢のように綺麗で優しい笑顔を浮かべていた。 まるで、高坂君と付き合っていたあの夏の日と同じように。 「本当、妹の胸の中で泣いてしまうだなんて…… 私も神魔の戦いを重ねすぎて随分歳をとってしまったものね? あなたがこんなにも大きくなるわけだわ」 でもすぐにいつもの『黒猫』の芝居がかった調子に戻るルリ姉。 そんなのは照れ隠しだってわかっているんだけどね。 それならあたしもいつもの調子に合わせないといけないよね。 「へへーん。JKなんてもうおばさんだからねー。 これからはこの成長した日向ちゃんがルリ姉のことを いつでも守ってあげるからなにも心配いらないよ!」 「そんな大口はセロリが満足に食べられるようになってから言いなさい。 ちょうどいいから今朝の日向のおかずはセロリの炒めものと セロリのサラダにしましょうか」 「やめてよ!昨日だって夕ご飯食べてなくてお腹ぺこぺこなんだから!?」 慌てて抗議の声をあげるあたしに、ルリ姉はいつものように意地悪くほほ笑む。 そんないつもどおりの日常の風景がやけに眩しくて。 素直なルリ姉も見た目通りの深窓の令嬢のようで素敵だとは思うけど。 やっぱりルリ姉はこのくらいでちょうどいいよね。 とはいえ、いつものようにふるまってはいるけれど きっとルリ姉のことだから、今回もすぐには立ち直れないんじゃないかと思う。 これまたいつものように、これが自分の罪だから、とかいって 不必要なくらいに自分を追い込む様が目に浮かぶようだよ。 やれやれ、まったく面倒な性格だよね。 少しは心配するまわりの人のことも考えてほしいもんだよ。 今回ばかりは高坂君に助けを求めるわけにはいかないだろうし。 そもそも高坂君には後できっちり仕返ししなくちゃいけないんだった。 大切な姉を振った不埒な輩に妹が復讐する権利は きっと日本では江戸時代から名誉な仇討として認められている。 たぶんキリ姉ならそういって賛同してくれるはずだよね。 まあ話がそれたけど、そういうことだから やっぱりあたしがルリ姉をフォローしてあげないとね。 ルリ姉が辛いときにはあたしが元気づけてあげよう。 ルリ姉が寂しいときには精いっぱい馬鹿やって笑わせてあげよう。 ルリ姉が泣きたくなったら恥ずかしいけどまた一緒に泣いてあげよう。 またルリ姉が安心して素敵な恋ができるようになる日まで。 だって……そんな恋する天使なお姉ちゃんが。 妹のあたしはやっぱり大好きなんだから。
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登録日:2017/12/07 Thu 03 20 50 更新日:2024/05/13 Mon 19 14 22NEW! 所要時間:約 33 分で読めます ▽タグ一覧 RPG アプリ ウィズ クイズ ゲーム コアエッジ コロプラ スマホゲーム ソーシャルゲーム ファンタジー 何故かなかなか立たなかった項目 魔法使い 魔法使いと黒猫のウィズ 黒猫のウィズ 概要 コロプラから配信されているスマホ向けクイズRPG。 クイズをテーマにしたゲームアプリとしてはトップクラスの知名度・人気を誇る。 コロプラ的には猫繋がりでアクションRPG『白猫プロジェクト』とセットで自社の二大代表作として扱われており、コラボも積極的に行われている。 略称は「黒ウィズ」「ウィズ」など。 幅広い知識とパーティー編成力、そしてもちろんガチャ運の総合力が問われるゲームである。 物語 君は「108の異世界」の一つクエス=アリアスの新米魔導士として港町トルリッカにやってきた。 そこで四聖賢の一人「ウィズ」の一番弟子として修業を積むことになった君だが、そこで予想外のトラブルに巻き込まれ、ウィズは黒猫の姿になってしまう。 ウィズを元の姿に戻すため旅立つ君は、様々な異世界を股にかけた数奇な運命をたどることになる… 通常エリア 港町トルリッカ エリア1。 主人公とウィズが出会い、物語の始まりとなる地。 通常エリアが対象のイベントやミッションが実施される度に多くのプレイヤーが訪れる。 王都ウィリトナ エリア2。 王宮があり、人々の交易が盛ん。 森の村ラリドン エリア3。 王都北西の森の中にある緑豊かな村。大森林の奥には聖域と呼ばれる場所がある。 ここよりステージ数が15となる。 水の都アイヴィアス エリア4。 王都北東の湖畔に位置する都で、対岸には水龍の祠があり、湖底神殿に繋がっている。 魔道都市サイオーン エリア5。 王国南端にある魔法学術都市で、魔法の研究が盛んである。 中央にはグノスタワーと呼ばれる機械仕掛けの塔がそびえ立つ。 エリア終盤にボスラッシュ等があり、ストーリーはここで1つの区切りを迎える。 城壁の街ロレンツィオ エリア6。 城壁に囲まれた街で、中心部に大きな教会がある。 風の郷オゥランディ エリア7。 多くの風車が建ち、人々は<無窮の風>と呼ばれる風の恩恵を受けている。 火口の遺跡アユ・タラ エリア8。 巨大な古代遺跡の塔オベルタワーがそびえ立ち、マップは縦長になっている。 ここから難易度が急上昇し、即死ダメージを与えてくる敵や、最終ステージの高難度パネル+全問正解サブクエストといった厄介な要素が登場する。 雪降る町ヴェルタ エリア9。 ウィズの故郷で、図書館や温泉がある。絶えず雪が降り続いているが、そこにはある秘密が…。 ここから戦闘BGMが変化する。シークレットクエストも登場。 中央本部ノクトニアポリス エリア10。 魔道士ギルドの中央本部で、中央に<ノクトニアの柱>、その周辺に三属性の塔<ドライ・エレメンティア>が建つ。 ワールド1はこのエリアで終了となる。 異端の町クルイサ エリア11。 別な世界から流れ着いた人たちが住み着いてできたスラムのような町。 難易度は非常に高く、1ターン目から7000ダメージを受けるクエストも。 太陽と月の国カムシーナ エリア12。 カムシーナ王が支配する国で、ギルドや人々がそれなりに友好的だったこれまでのエリアと違い「君」はいきなり追われることになる。実はウィリトナの時点でアレクの発言から存在が言及されていた。 新要素として、あらかじめ用意された精霊でデッキを組んで挑戦するトライアル戦が実装。 また、今までのエリアと違ってギルドマスター以外のクエストボスも普通に運用できる性能である。 門の秘境ウルドラ/異界の柱ルディニア エリア13。 これまで通常エリアと各種イベントクエストは完全に別枠として進行してきたが、ついにそれらが交錯し始める…… すべての始まり クエス=アリアス エリア14。メインストーリー最終章。 突如として「君」にとって見覚えのある黄昏の門がクエス=アリアスに顕現し、全ての謎は収束していく… 「黒ウィズグランドフィナーレ」というイベントと共に開催され、多くのプレイヤーを混乱に陥れたが、あくまで「メインストーリーの完結編」であり、黒ウィズ自体はまだまだ続いていくとのこと。 登場人物 主人公 項目を参照。 ウィズ CV 田村ゆかり 魔道士ギルドの最高意思決定機関「四聖賢」の一人である魔法使いの少女。 奔放な性格だが、四聖賢だけあって魔法に関しては世界有数の実力者。 主人公の師となり行動を共にするが、魔龍との闘いで黒猫の姿となってしまった。 基本的には主人公以外には黒猫になってしまったことを秘密である。 アナスタシア CV 茅原実里 四聖賢の一人。 魔道士ギルド内の派閥「統治派」の中心人物。 ウィズとは因縁がある。 クォ・ヴァディス CV 子安武人 四聖賢の一人。 常に笑顔を浮かべているが、その本性は・・・。 レマ・サバル CV 西山宏太朗 四聖賢の一人。上3人もなかなかギルド運営に関わらない問題児ばかりだったが彼は飛び抜けており、常に研究に没頭していて他の四聖賢も居場所が見当もつかないレベル。エリア11以降は彼を探すのが一つの目標となる。 エリエリ・サバル CV 三宅真理恵 レマの義理の孫娘。旅好きだったレマの息子が突然帰ってきてレマに預けていった。どうやらある魔法の適性があるようだが… バロン・ライオネル CV 広田みのる 港町トルリッカの魔道士ギルドのギルドマスター。ライオンの姿をした獣人。 主人公の魔道士ギルドへの登録処理を行い、ウィズを紹介した。 最初のエリアのギルドマスターだけあって、イベントの導入部等でも出番が多い。 出る度にネタキャラ化して行っている。よく似た兄がいるらしい。 アレク・ルミナレス CV 柿原徹也 王都ウィリトナのギルドマスター。 飄々とした性格で、天文学の知識が豊富。 主人公以外にウィズが黒猫になったことを知った最初の人物。 後にエリア13でも再登場する。 ロレッタ・ミラージュ CV 早見沙織 森の村ラリドンのギルドマスター。 大人しい性格の少女で、森の聖域を守る巫女でもある。 ルシェ・ワダツミ CV 三瓶由布子 水の都アイヴィアスのギルドマスター。アイヴィアスを統治するワダツミ家の次期当主。 ドラグニアと呼ばれる龍族の末裔であり、種族も龍族となっている。 祖父がかつての四聖賢であった。 ドゥーガ・ザムンタール CV 藤原啓治 魔道都市サイオーンのギルドマスター。眼帯ハゲマッチョ。 自信の肉体を誇示する言動が目立つが、魔道士らしく冷静な面も併せ持つ。 2016年4月1日に黄金と化した。 ベルナデッタ・イルマ CV 能登麻美子 城壁の街ロレンツィオのギルドマスター。 教会のシスターで、孤児たちを引き取り世話をしている。 オルネ・タンペート CV 釘宮理恵 風の郷オゥランディのギルドマスター。 ある理由からウィズを尊敬しているが、その弟子である主人公に嫉妬し、厳しい態度を取ることも。 ツンデレ。 ティア・ソピア CV 村瀬歩 火口の遺跡アユ・タラのギルドマスター。 少年のような風貌をしているが、クナビ族という長命の種族であり、実年齢は100歳を超えていると言われている。 キーラ・バルバレス CV 斎藤千和 雪降る町ヴェルタのギルドマスター。ウィズの幼馴染。 ヴェルタの中央図書館の管理人でもある。 ルベリ・クラクス CV 内匠靖明 中央本部ノクトニアポリスの責任者。 魔道士ギルドを統べる立場であるが、自身は魔法の力を一切持たない体質である。 父親はかつての四聖賢であったが、謎の死を遂げ、その弟子であったクォが後を継ぐ形で四聖賢の座に就いている。 彼には「ギルドマスター」という肩書きは出てこないが、ギルマス関連イベントでは他と同じくギルドマスター扱いされている。 アヤナ・ミナミカタ CV 甲斐田裕子 異端の街クルイサのまとめ役。 まとめ役、というのはクルイサにはギルドの支部が設置されていないため、ギルドマスターではないからである。とはいえ、ルベリと同じく実質ギルマスという扱い。主人公が情報を求めると、その対価として様々なクエストを依頼してくる。 カルマン・ジルベスト CV 三宅健太 太陽と月の国カムシーナの軍部の長。 この地域にもギルドは無いが上二人と同じく実質的にはギルマスである。 境界騎士団 「異界の歪み」から人々を守るために結成された騎士団。 メインシナリオには出てこないが、レイドバトル関連のサブイベントに出演。 詳細は項目参照。 システム クリスタル このゲームにおける課金要素。もちろん無課金でもそれなりには集まる。が、限定精霊コンプしようと思ったら課金必須である。 精霊 このゲームにおける「ガチャ」で当たるキャラ。精霊はカードとなって魔導士に力を貸してくれる。 この精霊を5体までデッキに組み込み、各ステージをクリアしていくことになる。 精霊のレア度はCから始まり最高のLまである。現状レア度L以外の精霊はほぼ戦力外である。 最高レアリティは長いことLであり、同じLでも性能にはかなりの格差が生じている。そのため、実装から時間が経ちすぎて時代遅れになってしまった精霊はレア度Lのまま性能だけ時代相応に引き上げる「L to L」という救済措置が取られることもある。古い精霊だとL to L to L to L…という意味不明なことになっていることもしばしば。 限定ガチャで当たる精霊の他、「メイトガチャ」で当たる精霊、ステージクリア報酬としてもらえる精霊、魔道杯報酬精霊など多数の種類がある。 精霊は各種属性、種族、HP、攻撃力の他、AS、SS、潜在能力を持っている。 アンサースキル(AS) 問題をエクセレント正解(後述)すると、攻撃と同時に発動。「攻撃力UP」だったり、「HP回復」だったりと効果は色々。 基本的には毎ターン発動していくことになる。 このASをバランスよくデッキに組み込むことが攻略の第一歩。 スペシャルスキル(SS) 各精霊が持つ大技。任意の回数問題に正解することでスキルチャージが貯まり発動可能になる。 一度発動すると再び一定回数正解するまで使用できなくなるが、効果は敵に大ダメージを与えたり、味方全体を一気に回復したり、パネルの色を変えたり、問題の答えを見破ったりと非常に強力。 潜在能力 「エーテルグラス」というアイテムを使うことで解放できる各精霊の特殊能力。 自身のステータスを強化したり、同じ属性・種族の精霊を強化したり、特定の色のパネルを来やすくしたりと様々な効果を持つ。 レジェンドモード レア度Lの精霊が持つ特殊能力。レア度Lの精霊は「SS1」と「SS2」の2種類のSSを持ち、SS1からさらに問題に正解していくことで、SS1よりさらに強力なSS2が発動可能になる。 このSS2が発動可能になった状態が「レジェンドモード」であり、ASもAS2に強化され、さらに潜在能力も解放される。 ただし、SS2を使用すると元に戻ってしまう。この状態でSS1だけ使うといったこともできないので要注意。 EX-AS アップデートで追加された能力。その精霊を連れてクエストをクリアすることで上昇する「契約レベル」が一定以上になると解禁。 「一定数正解する」「仲間のHPを100%未満から100%に一定回数回復させる」などの特定の条件を満たすことで発動し、レジェンドモードに入ると同時に強力なASが使えるようになる。 非常に強力だが、SSとは完全な互換関係にありEX-ASを使えるようにするとSSは使えなくなってしまう。編成時に任意で切り替えることは可能なのでクエストに合わせて使い分けよう。 属性 基本属性である「火、雷、水」と副属性である「光、闇」がある。全ての精霊は1~2個の属性を持っているが、光と闇は複属性のみ(敵として登場する精霊はこの限りではない)。 火は雷に強く、雷は水に強く、水は火に強い関係であり、光と闇は互いにダメージが増える関係。 また、クイズパネル(後述)にも関わって来る。 クイズパネル ステージは基本的に常にこのクイズパネルが4枚出現しており、プレイヤーは自分のターンに好きなパネルを選んでクイズに答えていくことになる。 パネルは「単色」「二色」「三色」に大まかに難易度分けされており、さらにそれぞれにジャンルが設定されている。 各精霊は自分と同じ属性のパネルに正解すると攻撃でき、さらに5秒以内に正解(エクセレント正解)できれば「アンサースキル(AS)」が発動する。基本的にこのゲームは毎ターンエクセレント正解を重ねてアンサースキルを常時発動していくことになる。 簡単に言えば「単色」パネルでは攻撃できる精霊の種類が少ない代わりに難易度が低く、「三色」パネルは攻撃できる精霊の種類が多い代わりに難易度が高い。 …というのが初期のゲームデザインだったはずだが、現在は「パネルブースト」の潜在能力もあって特定の属性で固めてしまうのが一般的。その代わり複色パネルを正解することでASが発動する精霊が増えた。 単色 正解率80%以上。誰でもわかるような超常識問題ばかり。 しかし、油断は禁物。特に80%ギリギリの問題はかなりのひっかけ問題が混ざって来ることがある。「単色なのにやたら正解率が低い問題」を引いてしまった場合は問題文をよく読もう。 二色 正解率60~79%。この辺りからそのジャンルに関する知識がないとキツイ問題が出てくる。 ただし、「問題文と選択肢から解答を削れる」ケースも少なからずあるので、例え二色を踏まざるを得なくてもよく考えれば解ける…はず。 正解率75%以上の問題だと、単色とほとんど変わらないようなものも多いが、60%近くになるとかなり厳しい。当たり外れが激しい。 三色 正解率59%以下。「解けるわけねぇだろ!」な問題がゴロゴロ出てくる。 基本的にそのジャンルについて深く知っていないとまず解けない。三色パネルしか踏めない状況だと運を天に任せる他ないこともある。 稀に 四択なのに正解率20% なんて鬼畜問題も… また、追加されたばかりの新問が正解率0%としてこの難易度に分類されていることもあるので超簡単な問題が紛れていることもある。 ジャンル 全10ジャンルから任意の6ジャンルを選べる。 かつては6ジャンル固定だったため、苦手なジャンルのパネルに悩まされる人が多かったが、現在はジャンル選択システムでだいぶ改善されている。 文系 国語、歴史、地理、公民など。以前は英語もここに入っていた。 基本的には難しくても中学校レベルなので、学校の勉強が得意だった人にはさほど難しくないジャンル。 一方理系と並んで苦手な人はとことん苦手なジャンルでもある。 また、ジャンルの幅が広いため、「日本史専攻だったから三色ぐらい余裕だぜ!」と思ったら世界史問題が出て撃沈することも稀によくある。 理系 生物、化学、物理、地学など。数学は稀。 文系と同じく学校の勉強ができていれば苦ではないだろう。 文系程はジャンルの幅がないため、これの三色には賭ける価値はある。 芸能 アニヲタ的には 鬼門 ジャンル。 簡単な問題なら、童謡や楽器の名前問題もあるのだが、曲名・歌手名などは単色でも結構キツイ。 実は 三色の方が簡単 という噂が時々ある。実際、芸能三色を踏んだら基礎レベルのクラシック知識で文系的には拍子抜け、というケースはたまにある。 「芸能」と言っても現代音楽からクラシックまでかなり幅が広いため、こういうことが起こるのだろう。 スポーツ アニヲタ的鬼門ジャンルその2 。 単色ならまだスポーツのルールなど手が出やすいものが多いが、活躍した選手の名前などになると… ただ、これも「○○年のオリンピック開催地は?」のように他の知識から選択肢が絞れるものもあるため、諦めてはいけない。 アニメ・ゲーム …というジャンル名だが、実際には仮面ライダーやウルトラマンなどの特撮問題も平気で混ざっている。 要はアニヲタ知識全般と思えばいいだろう。 ワンピースの問題率が高いことで有名。…実際にはみんな読んでいるので正答率が高く、単色に上がってきやすいだけなのだろうが。 複色問題はその作品を視聴していることが前提の問題が多くなってくるため、いざという時に踏むと地雷になりやすいジャンル。 雑学 すさまじく雑なくくりのジャンル。要はオールジャンルと言ったところか。 芸術関連やファッション関連、あるいは生活豆知識、グルメなど。 基本的には一般知識なので答えやすい問題が多い。 ニュース ここから下の3つはアップデートで追加された問題。当初は問題数が非常に少なく丸暗記が通用していたが、最近は割とそうでもないので注意。 ニュースは大まかな年代と共にジャンルが指定されており、その年代に起こった主なニュースに関する問題。 アニヲタ的鬼門ジャンルその3 。芸能関連のニュースがかなりの割合で含まれており、安易に踏みに行くと危険。 流行語だったり政治・社会のニュースなら比較的安心できるのだが… 英語 単語の英訳/和訳問題。 基本的には5秒以内で正解できる程度の難易度なので、中学で習ったレベルの知識があれば単色はまず余裕。安心できるジャンルの一つと言える。 計算 主に数式の穴埋め問題。解答部分だけでなく、四則記号のどれが当てはまるか選ばせる問題もある。時間さえかければ絶対に正解できるが、逆に言えば暗算が苦手な人にとっては鬼門となるジャンル。 漢字 上3つより後のアップデートで追加されたジャンル。漢字の読み書き・送り仮名などを問う問題。文系からさらに独立したジャンルと言える。 基本的には義務教育で習う範疇だが、特に画数を問う問題は5秒以内で正解するのが結構キツイ。 イベント イベントクエストでのみ出題されるジャンル。 そのイベントクエストにちなんだ特殊な問題が出る。主にコラボ先に関する知識を問う問題であり、アニメ・ゲームの発展形と言えるが、 問われる知識の深さが尋常ではない ため、その作品を知らないとかなりキツイ。 実は問題数がかなり少ないため、丸暗記が通用してしまうのだが… 難易度設定 多くのイベントは4段階の難易度から選べる。各難易度ごとにクエストクリア状況は独立しており、報酬も個別にもらえる。 基本的には最初はイージーかノーマルだけが選べ、ノーマルクリア後にハードとエクストラ解放となる。 イージー 一番簡単な難易度。どれぐらい簡単かと言うと、 問題に答えずとも大魔術を最初から使える精霊の艦隊で余裕でクリアできる レベル。 ゲームデザイン的に論外であるためか、この難易度はクリアしても報酬にクリスタルは含まれない。「ノーマルはクリアできないが、ストーリーは知りたい」という初心者向けの難易度と言えるだろう。 一応クリア回数にはカウントされるので、一部のミッションはこなせる他、低確率だがドロップ限定精霊が落ちることもあるのだが…。 ノーマル 初心者~中堅までのプレイヤーならまずクリアできるだろう難易度。 とはいえ終盤のクエストは難しいものもある。 ここから報酬にクリスタルが含まれるようになるため、クリアする意義も出てくる。多くのプレイヤーはこの難易度はクリアするだろう。 ハード 上級プレイヤー向けの難易度。ノーマルクエストと敵の構成は大体同じだが、スペックや使用スキルが大幅強化されており、各クエスト向けに専用のデッキを組まないとキツい。 手持ち精霊にある程度余裕がないとハード覇級や絶級はまずクリアできないだろう。 エクストラ アップデートで追加された難易度。 敵の構成はハードと全く同じ。 「ならハードクリアできれば楽勝じゃね?」と思いきや、 問題難易度が最高ランクで固定される という鬼畜仕様。 最低でも二色問題までしか出てこなくなるため、クイズ力が低い人には地獄のような難易度。一応パネル事故はまず起きなくなるが…。手持ちが潤っている人にとっては、二色以上のパネルの正解をトリガーとする精霊を容易に扱えるためハードよりも楽という声もある。 「見破り」や「問題難易度ダウン」を持つ精霊がいると楽になる…かもしれない。 なお、イベント限定精霊に関してはハードまででコンプできる仕様。そのため、クリスタルを諦めればこの難易度に関しては特に挑戦しなくてもよい。 この難易度ではドロップ有りのボスのドロップ率が100%であるため、複数体集めるならばこちらを周回できるようにしておきたい。 イベント イベントは非常に多い…というか常に2~3種類のイベントは開催されていると思っていい。 そんなに大量にイベントこなせねぇよ!な人のために、初心者も安心な「魔導士の家」という常駐施設がある。 ここでゲーム内通貨を支払えば、一定期間好きなイベントを開放できるのである。ついでに各イベントの進捗度に合わせてクリスタルももらえるので、チェック推奨。 ただし、魔道杯やレイドイベント、コラボイベントについては無理である。また開催されたばかりのイベントは開放できず、復刻されるまでの期間もまちまち。 ちなみにイベントの設定はほぼ全て「主人公が何らかのトラブルで他の異界に渡ってしまい、その異界で起きている問題を解決する」である。 以下代表的なイベント。 魔道杯 月末恒例のプレイヤー間対抗イベント。 大抵はその時開催されているイベントクエストの内容に沿ったストーリーと共に開催される。 特殊なクエストを何周もしてポイントをかき集め順位を上げるのが目標。専用の特殊デッキが求められるため、高順位を取るのはかなり難しい。 大体直前のガチャの目玉精霊が接待される傾向にあるが、変態染みた研究により運営の想定の斜め上の攻略方法が編み出されるのも毎度の恒例である ギルフェス 大体2週間に一回開催されるギルドのお祭り。お祭り好きすぎだろ。 素材クエストが全開放され、ドロップ率もアップ、さらにクリア回数に応じてクリスタルももらえる美味しいイベント。 レイドイベント レイドクエスト自体は常駐しているのだが、時折さらに強大なレイドボスが襲来することもある。 今までに襲来した強敵としては、 エヴァンゲリオン、ゴジラ、ラオウ など。 全体ポイント目標がやたら鬼畜なため、まず達成できない クイズスタディアム 「クイズゲーなのに、クイズ要素が薄まっている」という要望に対応するためか登場した常設イベント。 ただひたすら、特定ジャンルの問題に答えていくだけであり、手持ち精霊は一切関係ない。 クリアするとメダルが手に入り、プロフィールにも乗るので自慢できる。 ただし、シルバー以上のランクになると大体2色以上の問題しか出なくなるので、難易度が激増する。 報酬に精霊はいないので、余った時間などで気長に進めればいいだろう。 オリジナルイベント 超魔道列伝 何人もの魔女っ子が登場するギャグ調のイベント。 色々な意味で最強キャラ、アリエッタが必見。 詳細 主要人物 アリエッタ・トワ 魔法に関しては全世界どころか全宇宙において負けるものなしの大天才魔法少女で、様々な発明や論文を発表している…というところまでなら優秀極まりないのだが問題は発想がぶっ飛び過ぎていること。基本いらないことしかしない上に魔力だけはとんでもないため世界をトラブルの渦へ飲み込んでいく。 とはいえ本人は一部の悪行を除き悪気はないので生暖かく見守ってあげよう。 リルム・ロロット アリエッタ程ではないもののかなりの魔力を秘めた大魔法使い…のはずなのだが実は作中で魔法を使う描写がとてつもなく少ない。なぜかというと基本攻撃手段が杖の投擲だから。…お察しの通り彼女もビックリするくらいのアホの子です。 行動は兎も角アリエッタ以上に発言がぶっ飛んでいる。一応ロロット家と言う名家の生まれのため礼儀は正しいのだけど… 杖に宿っているエターナル・ロアという人格はぶっ飛び発言へのツッコミや無茶な使用で常に振り回されている(物理)。 ソフィ・ハーネット リルムの幼馴染で一時期共に旅をしていたこともある。その後ハーネット商会を起業した結果、大儲けでものすごい資産を築いている。 と、状況はぶっ飛んでいるが性格は圧倒的常識人。あまりツッコミには回らないものの上二人が撒いたトラブルの種を魔法や財力で解決していく。そしてこのイベントの正ヒロイン ただし、基本的には常識人であるものの、元々はリルムと共に魔道100人組み手を行っていたガチガチの武闘派であり、必要とあらば武力行使も辞さないなどやはりアブナイ一面もあったりする。 レナ・イラプション 上3人より少し年上でお姉さん気質…なのだが、二つ名の 爆炎のレナ が示し通り、爆発魔法にかけての才能と情熱がハンパない。その上若干戦闘狂な節があるため一度スイッチが入ると周りをクレーターだらけにする。 一応スイッチが入っていない時はそれなりに常識あるのだけど… エリス=マギア・シャルム 常識人枠でアリエッタのお目付役。すなわち胃潰瘍まっしぐらな御仁。アリエッタがしでかす度に叱りつけているのだが一向に効果なし。 それでもアリエッタのそばにいるのは「いつかまともになってくれる」と信じているから。一度アリエッタが反省した時は泣いて喜んだ。でもその後アリエッタは世界遺産を吹き飛ばしました。お疲れエリス。 イーニア・ストラマー 魔法界の重鎮なのだが見た目は幼女。理由は呪いをかけられたとのことで実年齢は不明(おそらく300歳以上)。エリスと同じくアリエッタの可能性を信じてはいるのだがその度にやらかすので最早呆れている。 なお本名は「イーニア・ハーメティック・ソルルスト・ラクトリティシア・ウォルヴィアラ・メメスリスムルナ・ストラマ―3世」。ピカソか! シリーズ作品 超魔道列伝☆アルティメットガールズ 超魔道列伝☆アルティメットサマーガールズ 超魔道列伝☆アルティメットハロウィンガールズ 超魔道列伝☆アルティメットワーキングガールズ 超魔道列伝☆アルティメットプラネットガールズ 超魔道列伝☆アルティメットアルティメットガールズ 聖サタニック女学院 魔界に存在する女子高を舞台にしたブラックユーモアあふれるイベント。 何気に他の異界との絡みが非常に多い。 クロム・マグナ魔道学園 魔法を教える学校クロム・マグナを舞台にしたイベント。ぶっちゃけ毎回元凶は学園長 基本ギャグだが、最終話である5や前日譚であるゼロは結構シリアス。 とある魔術の禁書目録とコラボしている。 エターナルクロノス 時を管理する時計塔、エターナルクロノスの管理者たちにまつわるイベント。 ブラック企業疑惑あり 双翼のロストエデン 天界と魔界、二つの異界にまつわる天使と魔族の物語。 ギャグとシリアスの同居具合が激しいイベント。 また2からは他の異界から飛ばされてきた2人の人間の子供が登場し、彼らの成長や育ての親としての絆も大きな要素となる。 黄昏メアレス ヴィクトリア朝風の世界を舞台に、「夢」を狩る「夢なき狩人」たちの物語。 シリアスかつ各キャラクターが立っている上に世界観の雰囲気が素晴らしく、非常に人気の高いイベントの一つ。 (2017年に行われた公式のイベント人気投票において、2位にダブルスコア以上の大差をつけてぶっちぎりの1位になったほど) 詳細 用語 ロストメア 舞台である「夢と現実の狭間の都市」に湧く化け物。その正体は「誰かが抱いて捨てた夢」の成れの果て。 例えば貴方が「科学者になりたい」という夢を子供の時見ていたとする。しかし当然学力不振や他の夢に目移りしたりでその夢を捨て去ることもあるだろう。すると、その夢が狭間の都市でロストメアとして実体を持つ訳である。 強い願われていたにも関わらず捨てられた夢ほど強い魔力を持っており、ある程度強力なものになると人に擬態する能力を持ち、意思疎通が可能なほどの知能も持つようになる。 その出自上、自分を捨てた人間達を恨んでいる者が多い。 門 夢と現実の狭間の都市の中で一際高い建造物。イメージとしてはパリの凱旋門が近い。 夕方、黄昏時になると中央が光だし、「現実」への道が開ける。この時ロストメアが門を通ると「夢が現実に出る」=叶ってしまう。先程の例だと突然貴方が科学者になってるように現実改変されるということ。しかしそれだけではなく副作用として物理的におかしい現象が発生してしまい多くの命が奪われることも少なくない。 メアレス 名前の通り 夢見ざる者 。ロストメアはまさしく夢そのものであるため、普通の人間は夢を潰すという行為に耐えられず攻撃しようとしても戦意が削がれてしまい倒すことができない。 ただし、自分が夢を持っていない、夢見ざる者であれば躊躇なくロストメアを倒せる。それがメアレスである。 とはいえその性質上「その日暮らし」で「大義も忠誠もない」ような奴らばかりなため全く統制は取れていない。勝手気ままにロストメアを殺して報奨金をもらってる連中も多い。 まあ「ロストメアを倒してみんなを守りたい」というのも夢である以上仕方ないのだが… 主要人物 サンセット=リフィル 主人公に「美芸に携わる者たちが築き上げた美の結晶のような少女」と言わしめる外見をしているが、性格は可憐ではなく最早苛烈。そんじょそこらの男より圧倒的に漢らしい性格をしている。 魔道が廃れ、人々が魔法を使えなくなって久しいこの異界において唯一の魔道士であり、人々に魔法の存在を見せつけるためだけにロストメアと戦ってきたが、世のため人のために魔法を使う主人公を見て自分の存在意義に疑問を持ち始める。 「サンセット」は名前ではなく字名で、「いつも黄昏に門の上からロストメアを探している」というのと「消えかけの魔道の黄昏を背負う者」のダブルミーニングになっている。 ガンダウナー=ルリアゲハ リフィルの相棒で、銃を得物にしている和装のメアレス。リフィルと比べて飄々としているが銃の腕前はピカイチ。 元々はとある国の姫として「国民と国土を守る」という夢を抱いていたがある事情からそれを手放し、国を出奔した。その後さまざまな国を流れたのちに狭間の地に辿り着き現在はメアレスをしている。 字名の 堕ち星(ガンダウナー) は「屋根からロストメアをバンバン撃ち落としていたら着いた」とのことだが、出自からして「姫(星)から堕ちた」ということとのダブルミーニングと考えられる。 エッジワース=ゼラード 本人の決め台詞「剣なら!負けねェ!」の文字通り、剣術においては圧倒的な実力を持つメアレス。しかし問題は「剣なら」の部分で、幼い時から剣としか向き合ってこなかった故に人の心がわかっていない節があり、メアレスとなったのも、「剣以外で初めてできた大事なもの、妻子を守りたい」という夢が、妻に逃げられてしまったことで破れたからである。 字名の 徹剣(エッジワース) もその「剣以外からっきし」を揶揄してのものだろう。 アーセナル=コピシュ ゼラードの娘で、自身もメアレス。とは言っても背負っている大量の剣をゼラードに要求された通りに念動で飛ばすお仕事なので、直接ロストメアに対峙するわけではない。もちろんそれでも12歳の幼女にしては物凄いが。 性格は父親と真逆でとても礼儀正しい。しかし同時に悩みを中に溜め込んでしまうタイプでもあるのでいつか爆発しないかゼラードは心配していたりしていなかったりする。 剣倉(アーセナル) の字名はシンプルに「剣の倉庫みたいな量背負ってる」ということだろう。 ウォーブリンガー=ミリィ 身の丈の程もあるパイルバンカーを振り回しながら戦うメアレス。元々ファッションデザイナーを目指していたが、絶望的にセンスがないと貶され落胆している時に、バイト先に暴漢が侵入。特に格闘術は習ったことがなかったが、天性の才能で撃退した。しかし不運なことにそれ故に「異常な服飾のセンスの無さ」が知れ渡ってしまい夢破れた。その後「夢がなくて強いやつ募集」という話を聞き狭間の都市に辿り着き、メアレスとなった。 字名の 戦小鳥(ウォーブリンガー) は「さえずる者」という意味で、「何かとオーバーリアクションな自分を揶揄してのもの」…と本人は思っているが、周りはミリィの忘れっぽい様を見て「鳥頭」を連想している。 ダイトメア=ラギト 徒手格闘でロストメアと殴り合う、通称「最強のメアレス」。と言っても本当に素手な訳ではなく、体内に飼っているロストメアの力を引き出すことで鎧とし、攻撃力も高めている。 元々孤児でなんの夢も持たずに育ち、そのまま自然な流れでメアレスを始めたが、ある時相棒が「メアレスで稼いだ金で外(現実)で一旗あげるよう」と言い出し、ラギトもそれに乗った。お察しの通り、メアレスではなくなった訳なのだが、二人はそれに気づかずいつも通りロストメア狩りに行き、なんでもない雑魚に負けた。その結果相棒は死に、ラギトの体にはロストメアが入り込んだという訳である。 字名の 夢魔装(ダイトメア) は字面通りだと思うが、ロストメアは名前の最後が 〇〇メア となるため、「お前は既にロストメアだ」という意味もあるのかもしれない。 アフリト 作中では主に「アフリト翁」と呼ばれる。実際のところ老人と呼ばれるほど年寄りにも見えないが、かと言って若くも見えない年齢不詳の怪人。怪しいことこの上ないが、当人がその怪しさを隠そうともしておらずそれがさらに怪しい。 「メアレス」ではないが、メアレスたちのまとめ役を務めており情報提供や報酬の支払いを担当している。見た目は怪しいが、仕事についてはとりあえず嘘は言わない。どうやらロストメアの魔力を集めていることには別の目的があるらしい。 常にパイプでタバコを吸っており、この煙を用いて様々な術を用いることができる。 街における主人公とウィズの保護者でもあるが、どうやら主人公とは浅からぬ因縁があるようで…? ぶっちゃけ元ネタの登場イベントが古い上にセリフがないため、ネタバレされても「誰だアンタ」的に受け止めてしまう人が多かったそうな。元ネタよりもアフリトとして登場している回数の方が圧倒的に多いし 覇眼戦線 「覇眼」という特殊能力を持つ人々とその下で戦う兵士たちを描いた戦記もの。 非常にシリアスで死者も多数出る重いイベントの一つ。 個々のキャラクターの人気は高いのだが、設定周りが後付けに次ぐ後付けで矛盾のオンパレードになってしまっており、その辺の評価は低め。特にルドヴィカの父親が後付けでかなり改悪されてしまっているのが…。 まあ主役のリヴェータからして、初出時とは完全に別人レベルに改変されているので今更ではあるのだが。 最終章の評価が際立って低く、晩節を汚してしまった感があるのが残念なところ。 空戦のドルキマス ドルキマス王国元帥、ディートリヒ・ベルクを主人公に据えた覇眼戦線とは別ベクトルの戦記もの。 空を舞台にした激闘はどこか銀英伝チック。 ぶっちゃけ1の印象が悪すぎたが、2以降でなんとか盛り返した 派生として空賊のジーク・クレーエを主人公とした「空戦のシュバルツ」およびコードギアス 反逆のルルーシュとコラボした「血盟のドルキマス」が開催されている。 幻魔特区スザク 自らの心を映し出す「ガーディアン」を使う少年少女を主人公とした本格SFイベント。 敵である「収穫者」たちも深く掘り下げられており、敵味方ともに人気が高い。 続編である「RELOADED」はその200年後が舞台で、かつて「収穫者」と戦った少年少女と「君」は英雄として語り継がれている。新たに出会った少年少女達とともに、その星を狙う〈王〉と戦うことになる。 響命クロスディライブ 幻魔特区と同じくSFイベントの一つ。 大災害によって地上のほとんどが結晶に覆われた世界で、生き残った人類はデータを物質化する「ディライブ」技術によって文明を再興していた。 そこで出会った記憶を無くした少女と、違法ディライブを取り締まる「クラックハンド隊」とともに大災害の真実を知ることになる。 ちなみにこの二つはどっちも結構なディストピア風味。そこまで最悪な状況ではないが。 八百万神秘譚 和風な世界を舞台にした神様たちの大騒動。 この異界も他のイベントとの絡みが結構多い。桃娘伝から数百年後?の世界である。 Zなど無かった、いいね? 神竜降臨 様々な「竜」が登場するカッコイイイベント。竜の力を借りた戦士たちが活躍する。 イベントの雰囲気はかなりシリアス。 魔轟三鉄傑 見た目も性格もまるで異なる三人組「魔轟三鉄傑」の痛快冒険譚。ぶっちゃけメンバーの雰囲気が違いすぎるので他のイベントで使えなかった余り物を寄せ集めただけに見える 今までのイベントとはレベルが違うギャグイベントでプレイヤーの腹筋を全力で破壊した。 ちなみにこの異界では主人公は 最短滞在時間 を記録している。 ぞばばばばばばば! 喰牙RIZE 本格的なバトル系シナリオ。実は色々な意味で主人公には縁があるイベントだったりする。 様々な異界の精霊の力が「トーテム」として大地や人々に流れ込む世界であり、客演が非常に多いイベント。また主人公のラディウスは「君」が普段暮らしている「クエス=アリアス」出身であり、境界騎士団に所属していた。 伏線がまだ残っており、現在回収待ち。 追憶のレディアント 記憶にまつわる純愛系イベント…のはずだが、主人公がやたら独りよがりだわ、描写に矛盾があるわ、敵が小物すぎるわ…であまり評判がよろしくない。 ぶっちゃけ黒歴史というやつで、長い間復刻されなかったことから運営も失敗したと感じていたのかもしれない。 だが、最後はプレイヤーの涙腺を崩壊。 AbyssCode 「Abcd」という種族を持つ特殊な精霊にまつわる一連のイベント。 共通しているのは、いずれのイベントもかなりの高難易度であること、そして「世界の破滅」に絡む悲劇的な結末を迎えていることである。 Blader 4つのシナリオからなるイベント AbyssCodとこのイベントはボスの最終進化に数十枚のボスが必要になるため、とても大変。 天上岬 調香師の姉妹が主役のイベント。 「君」が飛ばされる異界としては珍しくかなり平和で、悪人もほとんど登場しない。 「眠れる遺跡のアウトランダー」とは同一世界かつ同時間軸。 聖なる空のエステレラ 聖女と女神たちが主役のイベント。 このイベントの背景はとても美しいと評判。 桃娘伝 昔話をモチーフにしたイベント。 主人公のスモモはなぜかイングリッシュなワードで喋る。 スモモ「ドック!モンキー!フェズント!Δの陣!」 アイドルωキャッツ! 白猫プロジェクト・黒猫のウィズ・白猫テニスのコラボイベント。 黒猫側からはガトリン(魔轟三鉄傑)とリルム(超魔道列伝)が出演。 続編ではユッカ(エターナルクロノス)も登場。 シュガーレスバンビーナ 大人になると「獣」と化す街で掟に逆らって抗う少女たちのピカレスクもの。 「味方キャラたちがどう見ても悪人」と言う意味では斬新だったが、1のストーリーが割と支離滅裂だった上に主人公もなぜか一切登場しなかったため非難を浴びた。 2では「君」も参戦し、それなりにまともなストーリーになった。 Birth of New Order 神にも似た存在「審判獣」によってすべての善悪が決定される世界で、二つの陣営をそれぞれ率いて争いあう男女の悲恋的イベント。とにかく雰囲気が非常に暗い。 2で一度バッドエンドを迎えた後、3で過去に戻り、大団円を迎えた。 エニグマフラワーズ ニチアサ的な高校生魔法少女達と悪の組織との戦いを描くシリアスなイベント……ではなくギャグイベント。巨悪は主人公が小学生の時に既に滅ぼされており、登場する悪の組織は福利厚生のしっかりしたホワイトな職場である。そして悪の組織の幹部とはメアド交換済みだし何だったら人生相談に乗ってくれる。 アンダーナイトテイル 童話戦争 その世界の住人の生き様が童話として語られ、他の異界にも語られる世界。童話から消えてしまった登場人物達を探すため、やってきた「君」が見たのは争い合う童話の登場人物達の姿だった。 ぽっ!かみさま 双翼のロストエデン3にて故郷の世界に戻るべく異界へ渡った少年と少女であったが、目標とは異なる世界、さらにそれぞれ違う時間に飛ばされてしまう。そして異界に飛ばされた「君」もまた、ウィズとは違う時間に送られてしまう。再会を誓う彼らだが、その世界には不穏な空気が漂っていた……。 FairlyChord 音によって世界が構成され、さらに妖精や悪魔も存在する世界の東京が舞台。人の心の音色が聞こえる女子高生と、暴走した妖精を止めるために戦う妖精が主人公。 味方精霊にはそれぞれテーマ曲があり、敵にダメージを与え続けることでゲージを溜め、ゲージがMAXになると大きなバフを受けられるとともにそのテーマ曲にBGMが変化するというシステムが設定ともマッチしていて非常に熱い。 神都ピカレスク タイトル通り、2人の怪盗を主人公にしたピカレスクもの。登場人物の一部は異能を持っており、特殊な煙がそれに関わっているようだが詳細は不明。治安はあまり良くない異界のようで、殺しを良しとしない「君」の判断が後に危機を招いてしまう。 追記・修正は魔道杯で総合報酬ゲットしてからお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] なぜか子記事はあったのに親記事だけなかったので作成 -- 名無しさん (2017-12-07 03 33 40) むしろ今まで無かったんだなwww あと八百万に3なんてない(白目) -- 名無しさん (2017-12-07 08 18 49) クイズ大好き! -- 名無しさん (2017-12-08 18 24 43) 通常エリアについて簡単に追記しました。通常イベントの登場人物も追記しようと思います。 -- 名無しさん (2017-12-11 22 02 21) 高校生クイズのコラボは好きだったが未だにゴールド解禁できない… -- 名無しさん (2018-11-20 09 40 12) オリジナルイベントの部分について大幅に追記しました。個別項目作って詳しく書きたいけどやる気が出ない……とくに黄昏メアレス -- 名無しさん (2020-03-18 19 26 10) 黄昏メアレスとりあえずこっちに折り畳みで書いたけど、文量が意外と多くなったから独立させたほうがいいかもわからん -- 名無しさん (2021-06-25 16 58 05) 当たり外れはあるけど、シナリオのクオリティの高さはソシャゲの中でもトップクラスだと思う。ソシャゲでガチで泣いたのはMARELESSが唯一だわ。 -- 名無しさん (2022-10-14 09 38 50) リルムと杖の人のコンビだいすき -- 名無しさん (2022-10-22 14 34 22) 名前 コメント
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(2011-11-28) ……あなた、お兄さんと喧嘩したそうじゃない。 (2011-11-24) ふ……大切にして頂戴。 (2011-11-23) フ……有り難いことね。 (2011-11-22) ……っふ……私が下僕と共に“聖地【飯田橋】”へと赴く……そんなエピソードらしいわ。 (2011-11-18) ええ。この前お知らせした、千葉マツダの広告(黒猫バージョン)が掲載されていたわね。 (2011-11-12) こんにちは……眩い陽光に目が眩んでしまうわね。 (2011-11-10) くんかくんか。今宵のツイートから宣伝のにおいがするわ……。 (2011-11-8) アニメが放送されてたころからもう一年過ぎちゃったんだねー。 (2011-11-3) ちなみにそろそろ、あんたとあやせが、原作で遭遇してもいい頃でもあるよね。
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【性別】 ♀ 【その他】 ・≪召喚魔導師≫ロキの拾ってきた仔猫。現在は≪紅の翼≫セリの元にいる・名付け親は≪治療担当≫ユラ・至って普通の猫なのだが、時折「てんしさま」による介入で通信機?代わりに使われる
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ある日の五更家 ------------------------------------------------- 『AU』 「あれ?ルリ姉、携帯替えたんだ~」 日向が置いてあった携帯を手に取り聞いてきた 「へぇ~これ、iPhoneじゃん!しかも最新式のやつ!」 「え、ええ…そろそろ機種変更してもいいかなって…」 「あれ?でもなんでAUなんだろ?ソフバンの方が安いのになんで?」 「それは、その…“繋がる”事に意味があるからよ。」 愛Phone AU by Kyousuke Daisuki Dareyorimo Ishiteru い、言えない…SSに影響されたなんて口が裂けても言えない… 「ふ~ん、ふ~ん、ふ~ん。」 「な、なによ?」 「ん~、AU~、えーゆー、エーユー……そっか!わかった!!」 「な、何が解ったというのかしら?」 日向が『2ch黒猫スレまとめwiki』を見ていた?まさか…ね 「AUってさぁ、AカップUserって意味なんでs」 「Bよ!!!!」